第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

多臓器関連

[O135] 一般演題・口演135
多臓器関連

Sun. Mar 3, 2019 8:45 AM - 9:45 AM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:新井 正康(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター・集中治療医学)

[O135-6] 【優秀演題(口演)】心肺停止を契機に判明したBasedow病/甲状腺クリーゼの1例

提嶋 久子, 本間 慶憲, 坂東 敬介, 櫻井 圭祐, 遠藤 晃生, 松井 俊尚, 佐藤 朝之 (市立札幌病院 救命救急センター)

【背景】致死性不整脈の原因の一つに甲状腺機能亢進症がある。甲状腺機能亢進症の既往歴がある場合は不整脈との甲状腺ホルモンとの関連が容易に推測できると思われるが、既往歴がないまたは不明、かつ甲状腺機能亢進症に特徴的な身体所見がない場合は診断に至らず、合併症としての不整脈治療が奏功しない可能性が高い。致死性や難治性の不整脈の場合、甲状腺機能異常も念頭に置くべきである。【臨床経過】65歳、女性。既往歴に特記すべきことなし。職場での軽作業中に突然倒れ心肺停止となり救急要請。初期波形VFで救急隊によるAED1回施行後にAsystoleとなり、アドレナリン1mg投与後に心拍再開した状態で当院搬入となった。心停止時間24分(no-flow time 10分、low-flow time 14分)だった。搬入時HR157bpm、心電図及び12誘導心電図で心筋虚血を示唆する所見はなかった。その後1-2分間隔でAsystole、心拍再開、VF、徐脈を繰り返し、循環動態は極めて不安定だったため、搬入23分後(心停止から52分後)にV-A ECMOを導入した。その後全身CT撮像したが心停止の原因となるような所見はなく、CAG施行したが明らかな冠動脈病変はなかった。これらの間に視診上、甲状腺腫大があるような印象を得た(しかし内分泌科医の診察では甲状腺腫は明らかではないとのコメントだった)ので甲状腺ホルモンを追加でオーダーし、TSH0.02μU/ml以下、FreeT3 16.21pg/ml、FreeT4 3.52ng/dlと著明な甲状腺機能亢進所見を認めた。またのちに判明した検査結果では抗サイログロブリン抗体、抗TPO抗体、TSH受容体抗体の著明な上昇があり、Basedow病の確定診断に至った。V-A ECMOを継続しながら、脳低温療法(34℃、24時間)、甲状腺クリーゼに対する治療(MMI、KI、ハイドロコルチゾン)をおこなった。循環動態は徐々に安定し、翌日にはV-A ECMOを離脱できた。甲状腺機能亢進状態が持続している間は高体温・頻脈が持続したが、β-blockerを使用すると容易に徐脈になり、頻脈・徐脈を繰り返していた。甲状腺ホルモンが正常範囲になるころから心拍数は60~70bpmで安定し始めた。甲状腺ホルモンの安定化を待ち、CPC4の状態で第55病日転院となった。【結論】未診断のBasedow病のため甲状腺クリーゼから心肺停止に至った一例を経験した。特発性VFの中には稀ではあるが未診断のBasedow病が含まれている可能性がある。