第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

体温 研究

[O137] 一般演題・口演137
体温 研究

2019年3月3日(日) 10:35 〜 11:25 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:住田 臣造(旭川赤十字病院麻酔科・救急科)

[O137-4] 東京オリンピック・パラリンピックに向けた熱中症の集中治療室収用へ向けたトリアージシステムの検討

梅原 祥嗣, 神田 潤, 三宅 康史, 坂本 哲也 (帝京大学 医学部 救急医学講座)

【背景】
熱中症は大量の患者が発生し、その中には死に至る重症例も少なくないため2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けて、適切なトリアージシステムを構築する必要がある。現場では、救急隊が搬送先を選定するために、東京消防庁疾病観察カード(以下観察カード)が採用されていて、意識、体温、SpO2、呼吸数、脈拍、収縮期血圧のいずれか1項目でも異常だったら重症と判断して、救命救急センターへ搬送している。また、熱中症重症度分類III度の定義である中枢神経障害、肝・腎障害、凝固障害を各々の重症の程度に応じて点数化して、合計が4点以上もしくはGCS≦8をともなう3点を重症とすると(熱中症重症度スコア:以下重症度スコア)、転帰悪化例を鋭敏に選別できるので、初療で入院先を選定するのに有用だと考えられる。
【目的】
現場で観察カード、初療で重症度スコアを用いた場合の、実際の転帰を後方視的に検討して、トリアージとしての有用性を検討する。
【方法】
HeatstrokeSTUDY2012のデータを用いて、全国の103施設2147症例のうち、疾病観察カード、重症度スコアの判定が可能で、転帰が明らかな873症例を対象として、以下の1)2)の検討を行った。
1)現場では、搬送後の重症度スコアによる重症判断を評価項目として、現場での観察カードで陽性になった場合との感度、特異度、オッズ比を算出した。
2)初療では、入院中の死亡と人工呼吸器管理(転帰悪化例)を評価項目として、現場での観察カードと初療での重症度スコアのいずれかで陽性になった場合との感度、特異度を算出した。
【結果】
1)の現場でのトリアージの感度は84.4%(76/90)、特異度は26.8%(178/665)であり、オッズ比は1.984(95%信頼区間:1.094-3.598)だった。2)の初療でのトリアージの感度は100.0%(51/51)、特異度は24.9%(205/822)であり、特に、現場での観察カードと初療での重症度スコアのいずれも陰性であった場合は、入院後の転帰悪化例はいなくて、陰性的中度は100%(205/205)だった。
【結論】
観察カードはバイタルサインの測定のみで判定できるので、重症例を速やかに高い感度で搬送することが可能である。また、重症度スコアと合わせると、転帰悪化例や人工呼吸器管理を必要とする症例を、初療後に救命救急センター・集中治療室へ漏らさず収容することが可能になる。従って、観察カードと重症度スコアによる熱中症のトリアージは有用であると考えられる。