第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

体温 研究

[O137] 一般演題・口演137
体温 研究

2019年3月3日(日) 10:35 〜 11:25 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:住田 臣造(旭川赤十字病院麻酔科・救急科)

[O137-6] 体表冷却法による体温管理良好群と不良群の比較検討

伊藤 禎章1, 白山 幸平1, 林 真也2, 國嶋 憲2 (1.京都市立病院 臨床工学科, 2.京都市立病院 救急科)

【背景】
院外心停止自己心拍再開後昏睡状態患者に対する32~36℃の体温管理療法(以下TTM)の有益性は示されており、当院でも院内体温管理マニュアルに従ってゲルパッド式体表冷却法にてTTMを積極的に行っている。しかしTTMを行っている中で、しばしば体温管理が上手くできない症例を認めており、意図せず低体温となって不整脈を惹起してしまうことがあった。最終的にmechanical errorを疑って機器本体交換を行ったことさえある。
【目的】
ゲルパッド式体表冷却法は患者の体表に装着したゲルパッド内を温度調節された水が循環する事で体温管理を行うシステムである。しかし患者体温をフィードバックし体表から温度管理を行う場合、何らかの要因によって臨床的に満足できる管理ができない一定の限界が存在するのではないかと推察し検討を行った。
【方法】
院外心停止自己心拍再開後昏睡状態患者に対するTTMにおいて体温管理良好群と体温管理不良群を抽出した。体温管理不良群は目標体温を達成・維持するにあたってゲルパッド式体表冷却法機器のマニュアル調整及びそれ以外のケアが必要であった症例とし、両群をretrospectiveに比較した。
【結果】
体温管理不良群は良好群と比べて、目標体温に到達するまでの時間は長く、目標体温と患者体温の最大乖離温度は大きく、体重当りにおけるRocuronium最大投与速度(mg/h/kg)は優位に大きい結果であった(p<0.05)。しかし、体温管理不良である原因を確定するには至らなかった。
【結論】
ゲルパッド式体表冷却法による体温管理不良の原因は推定の域を超えないが、新たな体温管理デバイスの選択肢として血管内冷却法(IVTM)を試用し多職種カンファレンスを行った結果、体表からの体温管理には一定の限界があると結論付けた。また、看護師よりゲルパッド式体表冷却法は看護ケアにとられる時間が増大するとの意見がありICEREA試験(Deye N,et al.Circulation.2015;132:82-193)を支持する結果であった。体温管理不良であった症例を振り返り、目標体温の変更や体温管理デバイスの変更を含めて院内体温管理マニュアルの改訂を行う良いきっかけとなった。