第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

家族支援

[O138] 一般演題・口演138
家族支援

2019年3月3日(日) 08:45 〜 09:45 第11会場 (国立京都国際会館1F Room C-2)

座長:比田井 理恵(千葉県救急医療センター)

[O138-1] 無料低額診療制度の適用を必要とした集中治療患者の医学的、社会的背景について

田端 志郎 (耳原総合病院 総合診療センター)

【背景】症状発現後も受診を我慢し、救急外来受診時には重篤な状態に陥っている患者を散見するが、受診遅延の背景に経済的理由が潜んでいることがある。【目的】救急受診時に重篤な状態のため集中治療部門入室となった経済的困難患者の背景について調査し、医療機関が注意すべきことについて考察すること。【対象】2013年3月から2018年5月までの5年2ヶ月間に当院のERを受診し、経済的困難のために無料低額診療制度を適用した79例のうち、ICU/HCU/CCU入室した連続11例。【方法】医療相談室の無料低額診療ファイルを閲覧し、電子カルテ記載と突合して対象患者を抽出した。年齢、性別、健康保険の種類、職業、家族の状況、経済的理由による救急受診遅れの有無、無料低額診療制度の存在が当院選択理由か、入院後に利用した社会制度、救急受診時間帯、救急車搬送の有無、病名、予後について調査した。【結果】平均年齢は58歳(36-74歳)で男性が9名。国保が8名(うち資格証明書1名、短期証1名)で無保険が3名。無職が7名、独居が5名。経済的理由による救急受診遅れは5名。当院が無料低額診療を行っていることを理由に当院を選択したのは2名。国保のうち3名に生活保護を導入でき、無保険の3名全員に何らかの健康保険を取得できた。時間外受診が8名で、救急搬送は9名。集中治療部門入室病名は、IPPVを要する重症肺炎3名、NIPPVを要する急性心不全2名、緊急手術を要する消化管穿孔2名、IPPVを要する急性意識障害1名、急性大動脈解離1名、急性心筋梗塞1名、高浸透圧高血糖症候群1名で、3名が集中治療部門で死亡。【結論】中高年男性が多く、国民健康保険で経済的困難が目立った。経済的理由による救急受診遅れが半数を占め、時間外受診と救急搬送が多く、生命に関わる重篤な疾患ばかりであり、早期受診への援助が必要と考えられた。集中治療に必要な当座の医療費自己負担を無料低額診療制度で補えれば、後日に何らかの社会保障制度に繋げることができるため、無料低額診療制度は患者にとって有用であった。当院が無料低額診療事業を行っている事は知られておらず、事業の内容を広くお知らせする事が必要と思われた。