第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

医療倫理

[O139] 一般演題・口演139
医療倫理

2019年3月3日(日) 09:45 〜 10:35 第11会場 (国立京都国際会館1F Room C-2)

座長:恒吉 勇男(宮崎大学医学部附属病院集中治療部)

[O139-3] クリティカルケア領域のアドバンス・ケア・プランニングにおいて患者が体験する苦痛と意思決定支援

植村 桜, 豊島 美樹 (大阪市立総合医療センター 集中治療センター)

【背景】クリティカルケア領域では、全身状態の悪化や意識障害、鎮静による影響など、判断能力や意思を伝える能力が障害された状態にある患者が多く、治療やケアにおいて家族や医療チームによる代理意思決定が行われる機会が多い。しかし、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省)」において、アドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)の重要性が強調されており、患者自身の意思を直接確認し、尊重する過程をたどる意思決定支援の症例も増加してきている。A病院では、臨床倫理委員会の下部組織として倫理コンサルテーションチーム(以下、ECT)が活動している。今回、ACPの過程において、自律尊重を優先するため無危害の原則が守れず倫理的ジレンマを抱く症例を経験した。
【目的】症例を振り返り、クリティカルケア領域でのACPにおいて、患者が体験する苦痛と意思決定支援について明らかにすること。
【方法】研究デザインは症例集積研究で、2017年4月~2018年7月にECTが介入した症例のうち、クリティカルケア領域でのACPにおいて、患者の意思決定支援を実施した2症例を対象に、後方視的に診療録を調査し、患者が体験する苦痛を記述し、意思決定支援について検討した。本研究の実施においては、研究者の所属施設の臨床研究倫理委員会の承認を得た。
【結果】クリティカルケア領域でのACPにおいて、患者は低心拍出量症候群による倦怠感や呼吸不全による呼吸困難感など病状に伴う身体的苦痛を抱えており、回復が望めないことに対する不安感など心理的苦痛を感じていた。患者の意思確認の場面では、持続鎮静を減量・中止することで一時的ではあるが身体的苦痛が増悪する中、死を想起させる内容を含む病状説明が実施され、いずれの症例も時間的制約がある中、意思の再確認や治療方針決定は一両日中に進められた。意思決定後も、回復過程が遷延した症例では、闘病意欲の低下などの発言が認められ、長期的な支援が必要であった。
【結論】クリティカルケア領域でのACPにおける意思決定支援では、全人的苦痛のアセスメントと危機の予防的介入が重要であり、バッドニュースを伝える配慮と病棟との連携も含め長期的な支援体制の構築が必要である。また、非がん領域のACPを推進し、推定意思を活用できる体制を構築することも予防倫理として重要である。