[O139-5] 心肺蘇生により自己心拍再開したDNAR (Do Not Attempt Resuscitation)指示のある2症例
【背景】DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)指示は,患者の自律尊重(自己決定)に基づき,心停止時に心肺蘇生を実施しない旨を述べた医師の指示である。DNAR指示に関する合意形成は、厚生労働省「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」、あるいは日本集中治療医学会・日本救急医学会・日本循環器学会「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライ ン~3 学会からの提言~」の内容を忠実に踏襲すべきである。一方で、DNAR指示のある患者の心停止に直面する状況は様々である。【症例】症例1:90歳台、女性。Advanced AV block、severe ASあり。高アンモニア血症を伴う意識障害のため緊急入院となった。DNARの指示あり。意識は改善したが、休日研修医当直の診察中に突然VFとなり直ちにCPR(電気的除細動あり)を開始した。DNARの指示が出ていたのでCPRを中止したが自己心拍再開(ROSC)した。その後の経過は良好で、永久ペースメーカー挿入後に自宅退院となった。本人・家族は治療経過には納得されている。症例2:80歳台、女性。播種性真菌症、悪性リンパ腫疑いで入院加療中であった。DNARの指示あり。某日夜に胸痛を訴えた後、病棟内のトイレでCPAの状態で発見され、直ちにCPRを行いROSCした。ST上昇心筋梗塞(STEMI)の診断で家族の同意のもと経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と目標体温管理療法(TTM)を行ったが、vegetative stateとなった。家族は治療経過には納得されている。【結論】DNAR指示のある患者のCPAに直面する状況は様々であり、その運用・実践において判断や対応が難しい症例が存在する。