第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

安全・安楽

[O140] 一般演題・口演140
安全・安楽

2019年3月3日(日) 10:35 〜 11:25 第11会場 (国立京都国際会館1F Room C-2)

座長:川口 昌彦(奈良県立医科大学麻酔科)

[O140-2] 交差法と平行法を組み合わせた超音波ガイド下中心静脈穿刺と、交差法・平行法との比較:ランダム化比較試験

竹下 淳1, 西山 慶2, 志馬 伸朗3 (1.大阪母子医療センター 集中治療科, 2.国立病院機構京都医療センター 救命救急科, 3.広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 医学講座 救急集中治療医学)

【背景】超音波ガイド下中心静脈穿刺において、合併症回避のためには針先の正確な同定が求められる。交差法では周囲構造物との位置関係がわかり、血管の中心と針の進行方向を合わせやすいが深さの同定が難しい。平行法では深さの同定は容易だが、周囲構造物との位置関係が得られない。また、血管の長軸、超音波断面、穿刺針の3つを一致させる手技熟練を要する。我々は過去に、交差法で穿刺開始して平行法にスイッチする穿刺法(交差平行法)が交差法に比べて後壁貫通せずに穿刺成功する率が高いことをシミュレーターモデルを用いた研究及び実患者での前向き観察研究で報告し、ランダム化比較試験(RCT)の遂行価値を示した。【目的】交差平行法が、交差法および平行法に比べて後壁貫通せずに成功する率が高いことをRCTで証明する。【方法】研究デザイン:RCT心臓血管手術を受ける成人患者120名を40名ずつの3群に分け、麻酔導入後に交差平行法、交差法、または平行法で右内頸静脈を穿刺し、中心静脈カテーテル(CVC)または肺動脈カテーテル(PAC)を挿入した。交差平行法の手順:まず血管の中心を通る長軸と穿刺針を合わせるために交差法で穿刺開始し、皮下に針先を描出して血管の中心に向かっていることを確認した。次に針を動かさずにプローブのみを90°回転し、交差法で一致させた血管と針全体が長軸像で描出されたら、深さを確認しながら針を血管内に進めた。後壁貫通せずにガイドワイヤーを挿入できた場合にエンドポイント達成とした。主要評価項目はエンドポイント達成率、副次評価項目は穿刺時間とし、交差平行法と交差法、および交差平行法と平行法で比較した。検定法はχ二乗検定、マンホイットニーU検定を用い、P<0.05を有意とした。【結果】120名全例でガイドワイヤー及びその後のCVCまたはPACの挿入に成功した。エンドポイント達成率は交差平行法で100%(40/40)、交差法で70%(28/40)、平行法で95%(38/40)であった(P=0.0002; 交差平行法vs交差法、P=0.49; 交差平行法vs平行法)。穿刺時間は交差平行法で28.5(24.1-36.4)秒、交差法で31.7(24.4-40.6)秒、平行法で24.3(20.8-32.1)秒であった(P=0.53; 交差平行法vs交差法、P=0.044; 交差平行法vs平行法)。【結論】交差平行法は交差法に比べて穿刺時間が延長することなく後壁貫通を避けることができる。また、平行法に比べて穿刺時間は4秒長くなるが、この差は臨床的には意味がなく、同等に有用である。