第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

終末期

[O143] 一般演題・口演143
終末期03

2019年3月3日(日) 10:35 〜 11:25 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:住永 有梨(昭和大学病院 看護部)

[O143-2] 救急入院患者におけるDo-not-Attempt-Resuscitation: DNARの取得状況について

横山 俊樹1,2, 近藤 康博1, 木村 智樹1, 片岡 健介1, 松田 俊明1, 山野 泰彦1, 中島 義仁2, 市原 利彦2 (1.公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科, 2.公立陶生病院 救急部)

【背景】近年,高齢化とともに基礎疾患を持つ患者の増加が顕著となっており,患者背景に関わらず最善の治療や処置を行うべき救急・集中治療の領域においても様々な問題となることがある.2014年には救急・集中治療における終末期医療に関するガイドラインが提示され,2016年にはDo Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示についての勧告がなされたが,十分に浸透しているとはいえない.市中病院である当院でも昨年度から臨床倫理チームを立ち上げ,DNAR指示の在り方について検討を行っている.【方法】単施設コホート研究.2017年4月~9月に当院の救急部門集中治療室(ER-ICU)に入室した患者のうち,入院前または入院後にDNARが取得されていた患者について後方視的検討を行い,同意取得状況,予後について検討を行った.【結果】期間中にER-ICUに入室した670名の患者のうち70名(年齢81.0±9.7歳)でDNARが取得されていた.入院契機疾患は呼吸器疾患が34名,消化器疾患が11名,心疾患が9名,敗血症が7名,脳血管障害が6名,その他3名だった.背景疾患では悪性腫瘍が15名,慢性呼吸器疾患が15名で最多だった.ER-ICU在室期間は2.0±0.2日,入院期間は31.1±3.8日だった.入院中死亡は21例,1年以内の死亡症例も含めると32例だった.ER-ICU入室中に施行された侵襲的治療としては44例で酸素療法,8例でNPPV,5例で気管挿管(手術時含む),6例で血管作動薬が施行されていた.DNAR取得時期については35名が入院前,35名が入院後に取得されていた.入院前に取得されたDNARは平均354±300日前に取得されていたが,14例では取得日不明の過去のものであった.入院後にDNARを取得された症例のうち,22例は入院当日に取得されていたが,13例は入院2日目以降(16±10日)で取得されていた.入院当日にDNARを取得した22例では主治医・家族間の合意をもとにDNAR指示が決定され,本人意思についての記載は診療録上に認められなかった.【考察・結語】救急入院患者のDNAR取得状況は様々な背景をもととするため,妥当性について慎重に検討する必要があるが,多くは主治医・家族間であわただしく決められていた.また一方で1年以上前のDNARに基づいて治療上限が定められている症例もあり,適切なプロセスを経た終末期医療ができているとは言えなかった.今後は当院でも臨床倫理チームを中心にDNAR指示の妥当性について適正化していく必要があると考えられた。