[O145-1] In Culture:救急ICUの尿路感染症と感染管理文化
背景: ICU患者で尿培養検査を提出する機会は多いが、実際に尿路感染症と判断して治療に至る症例がどの程度あるか不明である。目的:救命救急センターICU(以下EICU)およびCCUにおいて、細菌尿を呈した患者の臨床的、細菌学的特徴、尿路感染症と判断しての治療開始の有無について調べる。方法:2017年7月1日からの1年間、EICU・CCU入室後に尿培養検査が提出された患者のカルテレビューを行い後方視的に検討した。結果:のべ305回提出された尿培養検体のうち、陽性となった103回(91人)について検討した。年齢中央値73歳(IQR 56-82)、男性57人(63%)、EICU・CCU入室期間中央値15日(IQR 8-22)であった。入院理由は循環器疾患が最も多く(25人、28%)、ついで神経系疾患(20人、22%)であった。尿培養検体採取理由として発熱が最も多かった(85回、83%)。分離菌ではEnterococcus属が42回(41%)と最多で、ついでE. coli(33回、32%)、Candida属(20回、19%)となった。尿路感染症と判断して新たに抗菌薬を開始、またはエスカレーションさせたのは18回(18%)で、全例に膀胱留置カテーテルが留置されていた。選択された抗菌薬はすべて尿培養からの分離菌に感受性を有していた。抗菌薬を開始しなかったのは28回(27%)あった(うち1例のみ4日後に尿路感染症と判断して抗菌薬が開始された)。退院時死亡は抗菌薬非開始患者で4人(15%)、尿路感染症と判断して抗菌薬を開始した患者で4人(22%)みられ有意差はなかった(p=0.06)。培養検体提出時、あるいはその48時間前まで膀胱留置カテーテルが留置されていたのは81回(79%)、非留置は22回(21%)であった。膀胱留置カテーテル非留置22回では、細菌尿であっても担当医が尿路感染症と判断して抗菌薬を新規開始またはエスカレーションした症例はなかった。結論:当院のEICU・CCU入室後の細菌尿で尿路感染症と判断したのは2割程度にとどまった。分離菌として腸球菌が最多という特徴があったが、抗菌薬選択を誤った症例はなかった。膀胱留置カテーテル非留置患者の新規の発熱やバイタルサインの悪化時は尿路感染症以外の原因を考える傾向にあった。当院EICUではカテーテル類など体内人工物をできるだけ留置しない「文化」と、集中治療医が積極的にグラム染色を行う「文化」があり、これらが今回の結果に反映された可能性がある。