第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 症例

[O146] 一般演題・口演146
感染・敗血症 症例07

2019年3月3日(日) 09:25 〜 10:05 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:丹羽 英智(弘前大学医学部附属病院 麻酔科)

[O146-2] 日本紅斑熱により播種性血管内凝固症候群と急性呼吸窮迫症候群を合併した一例

塩崎 美波, 池田 晃太郎, 玉澤 直人, 河原 章浩, 小林 知貴, 菊地 由花, 田妻 進 (広島大学病院 総合内科 総合診療科)

【背景】日本紅斑熱は発熱・皮疹・刺し口を3徴とするダニ媒介感染症であり、重症化する症例も少なくない。しかし好発地域以外では症例を経験することはまれであるため認知度が低く、診断・治療が遅れがちである。今回、我々は急性期播種性血管内凝固症候群(DIC)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を合併した重症日本紅斑熱を経験したため報告する。【臨床経過】40代歳男性、1週間続く発熱、頭痛、皮疹を主訴に当院皮膚科を紹介受診した。来院時、意識清明、心拍数85回/分、血圧84/60mmHg、体温35.6度。体幹四肢に約1cm前後の紅斑が散在し、一部癒合をみとめたが、明らかな刺し口はみとめなかった。来院時の血液検査所見はWBC 15,710/μL, CRP 28.5mg/dL, PLT 11,700/μL, AST 105IU/L, ALT 86IU/L, Cr 2.3mg/dLであり、各種培養の提出や皮膚生検を施行してセファゾリンナトリウムの投与が開始された。第2病日に熱源の精査目的に当科に転科。DICスコア5点であったため、トロンボモジュリンを開始した。また第3病日には急激な呼吸状態の悪化をみとめ、胸部レントゲンで両肺透過性低下をみとめた。心エコー検査では左室収縮は良好であり、ARDSが示唆された。熱源検索目的に造影CTを施行したが、熱源となる異常はみとめなかった。しかしながら、熱源が不明で呼吸状態の悪化やDICの進行を認めることから、ICUに入室して抗菌薬をタゾバクタム・ピペラシリン、ミノサイクリン塩酸塩に変更、ステロイドパルス療法を施行した。第4病日にリケッチア、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)感染を疑い、血清を保健所に提出、同日リケッチアのPCRが陽性との報告があった。また、骨髄検査では血球貪食像が確認され、第5病日に日本紅斑熱の確定診断に至った。追加の問診で、入院2週間前に虫に複数個所刺されるような山野へ行ったことが発覚した。その後全身状態は改善し、第10病日にICUを退室し、第16病日に退院となった。【まとめ】日本紅斑熱は治療が遅れると重症化し死亡する可能性もあるため、早期に本疾患を疑い、適切な治療介入をすることが予後転機に重要であると考えられる。