第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

感染・敗血症 症例

[O146] 一般演題・口演146
感染・敗血症 症例07

Sun. Mar 3, 2019 9:25 AM - 10:05 AM 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:丹羽 英智(弘前大学医学部附属病院 麻酔科)

[O146-4] 感染症治療中のピットフォールとなりうる全身性炎症性疾患:成人発症Still病の1例

首藤 瑠里1, 今林 慶祐2, 弓指 恵一1, 吉田 周平1, 草永 真志1, 秋本 倫太郎1, 宮川 一平1, 大坪 広樹1, 田中 良哉2, 真弓 俊彦1 (1.産業医科大学 救急医学講座, 2.産業医科大学 第1内科学講座)

【背景】救急・集中治療領域においては、多彩な疾患、複雑な病態を対象とすることが多く個々の症例における詳細な検証が重要である。
【臨床経過】症例は、37歳女性。骨盤骨折術後2年で抜釘術施行し自宅退院となった。術後2週間で術後創部感染認めたため入院のうえ創部デブリードマン、持続吸引ドレナージおよび抗菌薬(VCM)による治療を開始し、第7病日より血液検査で炎症所見の改善を認め、局所症状は改善した。しかし第17病日より咽頭痛と多関節痛を伴う39℃台の高熱を呈するようになった。創部の異常所見は認めないことより咽頭炎と診断し解熱剤内服にて経過観察したが、熱型はむしろ増悪し顔面の紅潮を生じるようになった。画像検査で膿瘍形成や骨髄炎所見はなく、薬剤性の発熱を考え全ての薬剤を中止、ドレーンも抜去したが改善しなかった。一方、血液検査上、肝機能障害と血球貪食症候群を疑う汎血球減少を呈するようになり、画像上も全身多発リンパ腫大と肝脾腫を認めた。感染症および薬剤性の発熱は否定的と判断し、病態から、悪性リンパ腫、壊死性リンパ節炎、成人Still病が鑑別として考えられた。第25病日に右腋窩リンパ節生検を行い、組織学的に悪性リンパ腫・壊死性リンパ節炎を除外した。最終的に成人Still病の山口らの分類基準において成人Still病と診断した。大量ステロイド療法を開始し病勢は劇的に改善し、第50病日に退院となった。
【考察】全身性炎症性疾患・自己免疫疾患の診断においては、時に血液検査、特に自己抗体の検出の有無などに頼りがちになる。一方、本例では、詳細な全身診察と病態の検証を行うことで、感染症治療中であったが、疾患診断マーカーの確立されていない成人Still病の可能性を速やかに想起し、診断、良好な治療転帰に繋げることが出来た。
【結論】多彩な症状、複雑な病態を呈することの多い救急・集中治療領域において、個々の症例の病態を詳細に検証することが重要であることを改めて示す教訓的な一例であった。