[O146-5] 治療に難渋したカテーテル関連血流感染症による生体腎移植後患者の侵襲性カンジダ症の一剖検例
【背景】2000年以降複数の新規抗真菌薬が登場したものの、カンジダ血症は依然として予後が悪く、ショックに至ると死亡率は50%を超える。【症例】79歳、男性。生体腎移植後でありメチルプレドニゾロン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルを内服中。肺癌・気管支癌術後、高血圧の既往あり。腰椎椎間板ヘルニア術後に発症した上肢蜂窩織炎のため入院中であり、セフトリアキソンの投与、経口摂取不良のため右内頸静脈に中心静脈カテーテル(CVC) が留置されTPNが施行中であった。入院経過中にショックに至ったため、ICUへ入室となった(第1病日)。39℃台の発熱、WBC 39100/μl、CRP 15.5 μg/dlと炎症反応の上昇を認めており、SOFA scoreは14点であった。敗血症性ショックと診断し、ノルアドレナリンにより循環動態を維持した。抗菌薬は、血液・尿検査結果や画像検索では明らかな感染源は特定できず、メロペネム・バンコマイシンを開始した。真菌感染症も考慮しミカファンギンも開始した。免疫抑制剤はプレドニゾロンとミコフェノール酸モフェチルのみ投与を継続した。第1病日に提出したβDグルカンは1000 pg/mlと高値で、血液培養より真菌が検出されたため第4病日にアムホテリシンBへ変更した。その後CVCの培養・血液培養よりともにCandida albicansが検出されカテーテル関連血流症(CRBSI)によるカンジダ血症の診断となった。両眼のカンジダ眼内炎に加え、第11、19病日に提出した血液培養でも同真菌が検出されたため、フルシトシン・ホスフルコナゾールを追加した。しかしその後の血液培養でも陰性に至ることはなくβDグルカンは3116 pg/mlまで上昇した。多臓器不全の進行のため第29病日に死亡となった。病理解剖のマクロ所見では肺、移植腎に多数の小結節を認め、カンジダ血症から全身に微小膿瘍を形成していたものと考えられた。【結論】生体腎移植後で免疫抑制剤使用中の患者に発症したCRBSIによる侵襲性カンジダ症に対して、複数の抗真菌薬を使用するも救命できなかった1例を経験した。