第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

呼吸 研究

[O155] 一般演題・口演155
呼吸 研究07

2019年3月3日(日) 10:25 〜 11:15 第15会場 (国立京都国際会館1F Room H)

座長:後藤 由香里(東京医科歯科大学医学部附属病院)

[O155-3] 多職種回診における臨床工学技士によるデータベースを用いた人工呼吸器離脱指標の検討

干川 祐樹, 大久保 淳, 浅見 達也, 宮留 優也, 野田 明里, 倉島 直樹 (東京医科歯科大学医学部附属病院 MEセンター)

【背景】集中治療領域の呼吸管理において人工呼吸器は必要不可欠な生命維持管理装置であるが、長期化にともない人工呼吸器関連肺傷害(VALI)や人工呼吸器関連肺炎(VAP)の頻度を増加させる。よって、適切なタイミングかつ早期離脱することが重要となり、本邦では2015年に人工呼吸器離脱に関して3学会合同プロトコルが提唱され臨床現場で普及している。さらに、医師のみならず多職種チームによる呼吸管理が早期離脱につながるという報告も散見される。しかしながら、我々臨床工学技士(CE)が呼吸管理に介入している施設は乏しいため、CEの人工呼吸器離脱に対するEvidence Based Medicine(EBM)確立が必要である。本学では、集中治療室(ICU)の多職種回診において、CEがデータベース(DB)を用いて人工呼吸器患者の情報を集約し、人工呼吸器から得られる生理学的指標を基にCEの視点でアセスメントを行い始めた。
【目的】多職種回診において、CEによるDBを用いた人工呼吸器離脱指標について検討した。
【対象および方法】DBを開始した2018年5月から9月までに本学ICUに入室し、24時間以上人工呼吸器管理となった40症例を対象とした。3学会合同プロトコルに準じてSBTを開始し、人工呼吸器を離脱できた群(Y:30症例)、離脱できなかった群(N:10症例)に分類。検討項目は原疾患、装着日数、血液ガスデータ、P/F、人工呼吸器設定(モード、FiO2、PEEP、PS)、意識レベル(GCS)、生理学的指標 (Cst、P1.0、RSBI 、RSBI・P1.0、IWI:Cst・SaO2/RSBI)とした。また、統計学的検定にはχ2乗検定、Mann・WhitneyのU検定を用い、有意水準<0.05を有意差ありとした。
【結果】原疾患はY群に比べてN群で脳血管疾患が有意に多く、 装着日数はY群:1.7±1.1日に比べN群:9.4±3.1日が有意に長かった。血液ガスデータ、P/Fに差はなく、人工呼吸器設定はPSがY群:5.8±1.1cmH2Oに比べてN群:7.1±2.17cmH2Oで有意に高値であり、意識レベルはN群9.9±2.3に比べてY群5.5±2.2が有意に低値であった 。生理学的指標において、Cst、P1.0に差はなく、RSBIはY群:39.4±14.1に比べN群:78.4±33.0が有意に高値であった。RSBI・P1.0はY群:55.8±39.8に比べN群:196.8±187.0が有意に高値、IWI はY群:241.3±136.7に比べN群:124.0±84.5が有意に低値であった。
【結論】多職種回診においてDBを用いた情報の集約は有用であり、これらの生理学的指標は我々CEの人工呼吸器離脱におけるEBMと成り得る。