[O157-2] 閉塞性細気管支炎による慢性重症呼吸不全に対し132日間の長期VV-ECMO後に脳死肺移植を成功させた1例
【緒言】脳死肺移植へのブリッジとしてECMO (Extracorporeal membrane oxygenation)を利用して成功し得た報告は、本邦では過去に当科からの1例のみである。今回、閉塞性細気管支炎による慢性重症呼吸不全に対しVV-ECMOを導入、132日間の長期VV-ECMO後に脳死肺移植を成功させた症例を経験したので報告する。【症例】29歳男性。201X-9年に急性骨髄性白血病を発症。201X-6年に同種骨髄移植を行い寛解。骨髄移植後、皮膚GVHD(Graft versus host disease)の他に閉塞性細気管支炎、侵襲性肺アスペルギルス症、難治性気胸を合併し、慢性呼吸不全となった。201X-3年に気管切開を施行、人工呼吸管理となり、201X-2年に肺移植登録された。しかし、PaCO2 120mmHg以上とII型呼吸不全が急性増悪し、VV-ECMOの適応について201X年当科に紹介された。ECMOチームが紹介元の施設に出向き、右内頸静脈脱血(23Fr)、左大腿静脈送血(21Fr)にてVV-ECMOを導入、状態を安定させた後に当院へ搬送した。搬送後は人工呼吸器を併用してECMO流量3-4L/minでSaO2 90%以上を維持、吹送ガス流量を調節してPaCO2 40mmHg前後に維持した。Awake管理とし、経腸栄養と限定的な経口摂取、ベッド上リハビリテーションを行った。主な合併症は、出血(左大量血胸:導入17日目、右上葉出血:導入117日目)、感染症(右上肢蜂窩織炎および感染性腸炎:導入83日目)であった。デバイス交換は合計9回行った。送脱血カニューレの交換は導入126日目に行ったが、その培養結果は陰性であった。ECMO導入132日目にドナーが発生、登録肺移植施設にECMO搬送した。肺移植手術は問題なく終了し、ECMOから離脱した。【考察と結語】通常の人工呼吸管理では限界となった肺移植レシピエントに対し、4ヶ月を超えるVV-ECMOにより、比較的良好な全身状態を維持し、脳死肺移植へのブリッジを成功させた。長期ECMOのノウハウを蓄積していくこと、肺移植へのブリッジに適したデバイスの開発、そして患者管理環境の整備が今後の課題である。