第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

臓器移植

[O157] 一般演題・口演157
臓器移植

2019年3月3日(日) 08:45 〜 09:35 第16会場 (国立京都国際会館2F Room I)

座長:美馬 裕之(神戸市立医療センター中央市民病院麻酔科)

[O157-2] 閉塞性細気管支炎による慢性重症呼吸不全に対し132日間の長期VV-ECMO後に脳死肺移植を成功させた1例

池田 督司1, 谷口 隼人1, 梅井 菜央2, 源田 雄紀1, 間瀬 大司1, 佐藤 雅昭3, 安樂 真樹3, 中島 淳3, 市場 晋吾1, 坂本 篤裕2 (1.日本医科大学付属病院 外科系集中治療科, 2.日本医科大学大学院 疼痛制御麻酔科学, 3.東京大学医学部附属病院 呼吸器外科)

【緒言】脳死肺移植へのブリッジとしてECMO (Extracorporeal membrane oxygenation)を利用して成功し得た報告は、本邦では過去に当科からの1例のみである。今回、閉塞性細気管支炎による慢性重症呼吸不全に対しVV-ECMOを導入、132日間の長期VV-ECMO後に脳死肺移植を成功させた症例を経験したので報告する。【症例】29歳男性。201X-9年に急性骨髄性白血病を発症。201X-6年に同種骨髄移植を行い寛解。骨髄移植後、皮膚GVHD(Graft versus host disease)の他に閉塞性細気管支炎、侵襲性肺アスペルギルス症、難治性気胸を合併し、慢性呼吸不全となった。201X-3年に気管切開を施行、人工呼吸管理となり、201X-2年に肺移植登録された。しかし、PaCO2 120mmHg以上とII型呼吸不全が急性増悪し、VV-ECMOの適応について201X年当科に紹介された。ECMOチームが紹介元の施設に出向き、右内頸静脈脱血(23Fr)、左大腿静脈送血(21Fr)にてVV-ECMOを導入、状態を安定させた後に当院へ搬送した。搬送後は人工呼吸器を併用してECMO流量3-4L/minでSaO2 90%以上を維持、吹送ガス流量を調節してPaCO2 40mmHg前後に維持した。Awake管理とし、経腸栄養と限定的な経口摂取、ベッド上リハビリテーションを行った。主な合併症は、出血(左大量血胸:導入17日目、右上葉出血:導入117日目)、感染症(右上肢蜂窩織炎および感染性腸炎:導入83日目)であった。デバイス交換は合計9回行った。送脱血カニューレの交換は導入126日目に行ったが、その培養結果は陰性であった。ECMO導入132日目にドナーが発生、登録肺移植施設にECMO搬送した。肺移植手術は問題なく終了し、ECMOから離脱した。【考察と結語】通常の人工呼吸管理では限界となった肺移植レシピエントに対し、4ヶ月を超えるVV-ECMOにより、比較的良好な全身状態を維持し、脳死肺移植へのブリッジを成功させた。長期ECMOのノウハウを蓄積していくこと、肺移植へのブリッジに適したデバイスの開発、そして患者管理環境の整備が今後の課題である。