第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

補助循環 研究

[O158] 一般演題・口演158
補助循環 研究03

Sun. Mar 3, 2019 9:35 AM - 10:35 AM 第16会場 (国立京都国際会館2F Room I)

座長:森實 雅司(済生会支部神奈川県済生会横浜市東部病院臨床工学部)

[O158-4] V-A ECMO中、動脈血酸素分圧300mmHg以上の管理で炎症性反応が急上昇する‐小動物モデルを用いた検討-

藤井 豊, 追手 巍, 中村 藤夫 (新潟医療福祉大学 医療技術学部 臨床技術学科)

【背景】補助循環は心不全患者や重症呼吸不全患者の呼吸・循環維持に多く用いられている。一般的に補助循環中は血液が人工肺で酸素化されることにより高酸素分圧で管理されることが多い。【目的】生体が過剰な高酸素の環境に暴露されることで活性酸素種が発生し、様々な弊害が起こるが知られている。これまでに、我々は補助循環中の過剰な高酸素分圧管理は全身性炎症反応を助長することを証明している。今回、どのレベルから炎症反応が上昇するのかを解明するために、小動物モデルを用い検討した。【方法】補助循環システムの総充填量は15 mlで、人工肺(充填量 3 ml・膜面積 0.03 m2・ポリプロピレン・内部灌流)、回路 (外径3 mm・塩化ビニル)から構成される閉鎖回路である。SDラット(雄、400‐450 g、n=40)を用い、送血管を左総頚動脈、脱血管を右外頚静脈から挿入し右房に留置し、ポンプ流量60 ml/kg/minにて補助循環を確立した。補助循環中、動脈脈血酸素分圧(PaO2)を100-199 mmHgで管理したA群(n=11)、200-299 mmHgで管理したB群(n=10)、300-399 mmHgで管理したC群(n=8)、400 mmHg以上で管理したD群(n=11)に分けた。補助循環前、補助循環開始後60分、補助循環終了時(120分)の時点で採血を行い、血球分析、炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α)、抗炎症性サイトカイン(IL-10)を計測した。さらに、直接的に活性酸素種のスーパーオキサイドの検出が可能であるDihydroethidium(DHE)染色法を用い、肺・肝臓の評価を行った。データは平均値±標準誤差で示す。【結果】両群とも循環動態は安定し、無輸血での維持が可能であった。各種マーカーを比較した結果、補助循環中のPaO2を300 mmHg以上で管理したC群、D群で炎症性サイトカインIL-6の上昇が著しく(実験終了時:A群 696±122 pg/ml、B群 837±147 pg/ml、C群 1699±132 pg/ml、D群 1598±100 pg/ml)。さらに、DHE染色の結果から、PaO2が高い群になるほど臓器におけるスーパーオキサイドの発生が増大していることが観察できた。【結語】補助循環中、動脈脈血酸素分圧300 mmHg以上の管理は活性酸素を発生させ急激な全身炎症性反応を助長することが示唆された。