[O158-7] IABPを効果的に用いた治療戦略の提案-虚血性心疾患治療のコンセプトとアウトカムの報告-
【背景】昨年、本学会のパネルディスカッションで当院で実践中の周術期治療戦略について報告した。当院は地域中核施設で、一定数のハイリスク症例を治療しているため、質の高い医療を安定して提供すべく、補助循環を効果的に用いている。今回は、当院で行っている補助循環、特にIABPを用いた周術期治療戦略について報告する。当院ではハイリスク症例に対し、術前からのplanned IABPを積極的に使用している。予定手術の場合は術前に多職種でのカンファレンスを行い、必要と考えられる症例に対しては、確実な留置、周術期の循環補助、人工心肺時間の短縮などを目的として術前に透視下にIABP留置を行い、ICUで管理を開始している。術直後からの循環動態の速やかな安定化を第一とし、それが結果的に早期抜管、早期離床につながるというコンセプトで周術期の管理を行っている。治療成績を報告する。【対象と方法】観察期間中(2005ー2017年)に施行した冠動脈バイパス(CABG;単独もしくは複合手術) 471例を、planned IABPを用いたA群99例(21%)と用いていないB群372例(79%)に分けて検討した。【結果】A群ではNYHA III度以上、低いLVEF、LMT病変、狭窄の枝数、準緊急手術が多く(p<0.05)、B群では喫煙の継続、透析患者が多かった。その他の患者背景(年齢、性別、BMI、糖尿病、喫煙歴、HT、DL、Insulin使用、脳梗塞や心筋梗塞の既往、PADの有病率、複合手術)は二群間で差がなかった。手術時間、人工心肺時間、Pump conversion、術後出血再開胸、OPCAB率、輸血、再建枝数は二群間で差を認めず、術後af、創感染、縦隔炎の発生にも有意差はなく、挿管日数はA:Bで1.6 ± 2.2:1.1 ± 1.6 (p<0.05)、ICU滞在5.6 ± 3.7:4.4 ± 4.2 (p<0.05)、在院日数26 ± 18:23 ± 14 (p=0.074)ともにIABP非使用群で短い傾向にあった。両群とも入院中の術後急性期脳梗塞の発生は無く、30日死亡率は2.0%:1.6%、在院死亡率は2.0%:2.1%、MACCE発生は2.1%:2.4%と、合併症発生および死亡率は二群間に差を認めなかった。【考察】当院の、積極的に循環補助を用いる治療戦略の成績は概ね良好であった。IABP使用群では挿管時間やICU滞在時間が長引く傾向にあるが、ハイリスク群であるにもかかわらず成績に差がないのは、当院の、ハイリスク症例に対する循環動態の安定化を目的とした術前からのIABPの使用が寄与している可能性がある。