第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄

[O16] 一般演題・口演16
鎮痛・鎮静・せん妄01

Fri. Mar 1, 2019 9:00 AM - 10:00 AM 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:林下 浩士(大阪市立総合医療センター 救命救急センター・集中治療センター)

[O16-5] デクスメデトミジンが小児広範囲熱傷のPAD管理、PTSD予防に有用であった一症例

寺島 嗣明, 阿曽 広昂, 加藤 祐将, 森 久剛, 後長 孝佳, 津田 雅庸, 加納 秀記, 武山 直志 (愛知医科大学病院 高度救命救急センター)

【背景】 広範囲熱傷は、長期にわたる挿管管理、複数回の手術、術後安静、連日の処置など疼痛や苦痛を伴う長期の治療を必要とする。特に小児は治療に協力することは難しく、安静保持および精神ケアに苦慮する。長期にわたる疼痛・不穏・せん妄(Pain,Agitation,Delirium以下PAD)の管理が重要になる。今回、デクスメデトミジン(以下DEX)を基本薬剤として、PADの管理を行い良好な経過をたどった小児広範囲熱傷患者を経験したので報告する。【臨床経過】 症例は既往のない8歳男児。自宅火災にて2017年11月某日受傷。ドクターヘリにて対応し搬送中に挿管管理とした。DDBが顔面、胸部、背部、上肢、下肢に計40%、減張切開を要する3度熱傷は右下肢に10%認め、burn indexは30であった。初回手術は第5病日に実施し、術後創部安定化のため深鎮静で管理した。第8病日からDEX持続投与(0.8μg/kg/h)を追加し日中覚醒を促し、第10病日に開創後、抜管となった。抜管後「熱い」との訴えと、発作的に泣き出すなどの症状を呈した。術後せん妄の可能性やフラッシュバックの可能性があるため以後のPAD対策として以下の計画を立案した。1,DEX持続投与により日中はRASS 0、夜間は入眠できる容量に調整する。2,処置時は、チアミラールナトリウムでRASS-4まで鎮静し、必要に応じケタミン塩酸塩を併用する。処置終了後速やかに覚醒できる使用量に調整する。3,全身状態安定後は、DEX持続投与を中止し、処置時の鎮静鎮痛剤投与のみする。DEX持続投与を要する1の期間は3日間要した。第13病日よりDEX持続投与を中止し3に移行し、チアミラールナトリウムとブプレノルフィン塩酸塩を処置時の鎮静鎮痛に用いた。第20病日に2回目の手術を施行、第22病日に抜管したがせん妄を認めなかった。早期離床、家族介入により、以後は処置時チアミラールナトリウムのみで管理可能であった。第33病日に3回目の植皮を行い、第39病日一般病棟転棟、第61病日自宅退院とした。受傷3か月後、6か月後に確認したところPTSD症状は認めていない。【結論】小児をICUで鎮静する際には使用薬剤が限られ薬剤耐性を認める場合も多く対応に苦慮する。小児に対するDEX投与は、使用経験が少なくいまだ安全性が確立していないものの、耐性を生じにくく、抗不安作用、鎮痛作用を有するため、循環抑制に注意すれば、小児PAD管理に有効である。