第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

新生児・小児 研究・経験

[O162] 一般演題・口演162
新生児・小児 研究・経験02

2019年3月3日(日) 10:05 〜 10:55 第17会場 (国立京都国際会館2F Room J)

座長:辻尾 有利子(京都府立医科大学附属病院 看護部 PICU)

[O162-3] 【優秀演題(口演)】ΔPediatric Sequential Organ Failure Assessment(pSOFA)は小児せん妄と関連する

星野 晴彦1,2, 松石 雄二朗1,2, 下條 信威3, 榎本 有希3, 城戸 崇裕3, 樋口 大二郎1, 瀬尾 真理子1, 岡野 正和1, 飯田 育子1, 井上 貴昭1 (1.筑波大学附属病院 看護部, 2.筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻, 3.筑波大学附属病院救急・集中治療部)

【背景】せん妄は急性の脳機能障害であり、手術や敗血症による侵襲が脳へ影響を及ぼした時に発症する症候群であり、成人集中治療領域では全身状態の悪化を示す指標の一つであると考えられている。しかし、言語機能が未熟で不安や不快感を不穏行動で示すことが多い小児患者では、全身状態の悪化をせん妄が反映しているかどうか不明である。【目的】本研究の目的は日々の全身状態の変化が連日のせん妄状態へ関連するかを明らかにすることである。【方法】研究デザインは前向きコホート研究、対象は2017年6月から2018年4月までに当院小児集中治療室に48時間以上在室した患者とし、入室から退室まで、もしくは入室から31日までのデータを収集した。せん妄と他の疾患との鑑別が困難であることから脳神経疾患、蘇生後患者は除外した。意識状態の評価にCornell Assessment of Pediatric Delirium (CAPD)、Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS)を使用し、RASS-3以上でCAPD8 点以下を非せん妄/非昏睡、RASS-3以上でCAPD9点以上をせん妄、RASS-4以下を昏睡と分類した。毎日の重症度の指標としてPediatric Sequential Organ Failure Assessment(pSOFA)を使用し、前日からのpSOFAの変化をΔpSOFAとして重症度の変化を示した。患者に投与されているミダゾラム、デクスメデトミジン、フェンタニルの1日の使用量、患者の月齢を共変量に加え、意識状態へのΔpSOFAの影響を多変量解析を用いて解析した。【結果】188名を合計1622日観察した。観察患者の月齢はmedian 48.6ヶ月(IQR 3-76]、入室時の重症度を示すPRISM3はmedian12点 (IQR 6-17)、人工呼吸器装着患者が93名(48%)、ICU滞在日数はmedian 4日(IQR 1-10]であった。意識が非せん妄/非昏睡からせん妄へ変化した郡と、昏睡からせん妄に変化した郡の間にΔpSOFAの有意差を認めた[OR1.38(95%CI 1.07-1.73 p=0.013)]。加えて意識状態改善郡(ex.昏睡からせん妄)、悪化郡(ex.清明からせん妄)、変化なし郡(ex. 昏睡から昏睡)の3郡を多項ロジスティック回帰で分析すると状態悪化郡と改善郡の間でΔpSOFAの有意差が確認された[OR 0.68(95%CI 0.58-0.81 p < 0.01)]。【結論】せん妄への変化に加えて意識状態の変化の間にΔpSOFAの関連が認められた。この結果から小児せん妄は全身状態の変化へ関連することを示しており、全身状態を評価するための有益な指標の一つとして考えられる。