第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

感染・敗血症 症例

[O17] 一般演題・口演17
感染・敗血症 症例01

Fri. Mar 1, 2019 10:00 AM - 10:50 AM 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:小林 敦子(宝塚市立病院感染対策室)

[O17-6] 結核に対する集中治療中にサイトメガロウイルス腸炎を発症した一症例

神戸 寛史1,2, 堀口 真仁1, 藤井 博之2, 辻 泰佑2, 朝枝 興平3, 香村 安健1, 榎原 巨樹1, 安 炳文1, 竹上 徹郎1, 高階 謙一郎1 (1.京都第一赤十字病院 救急集中治療科, 2.京都第一赤十字病院 呼吸器内科, 3.京都第一赤十字病院 消化器内科)

【背景】集中治療管理下の患者の下痢症はときに循環動態に影響を及ぼすこともあり、原因を追及する必要がある。今回、初発活動性肺・気管支結核に対して広域抗菌薬・抗結核薬使用中に多量の下痢を認め、精査の結果cytomegalovirus(CMV)腸炎の診断を得た症例を経験したので報告する。
【臨床経過】50歳代男性。既往歴にChild-Pugh分類Aのアルコール性肝硬変がある。抗HIV・HTLV-1抗体は陰性。当院入院の2週間前より発熱を認め、前医で肺炎治療を行われたが軽快しないために当院へ転院、抗菌薬やmethylprednisoloneの投与を行った。精査の結果、活動性肺・気管支結核と診断し、第4病日に結核指定病院へ転送した。転院後、多量の下痢便をきたして腎前性腎不全に至り、緊急透析を含む集中治療管理が必要と判断され、転院20日後に再度当院へ転院した。2回目の入院後、各種培養検査や便中抗酸菌・Clostridioides difficile(CD)抗原およびtoxin・血清CMV抗原等の検索を行ったが原因は指摘できなかった。結核の治療としてisoniazid・levofloxacin、CD腸炎を疑い内服vancomycin・metronidazoleを投与したが、これらの治療介入にもかかわらず水様性下痢が増悪し、1日8リットル以上も認めるようになった。再入院後第4病日に上部、第8病日に下部消化管内視鏡検査を施行したところ、回腸末端から全結腸にかけての絨毛脱落と高度の腸管浮腫を認めた。CMV腸炎に典型的な所見ではなかったものの、回腸末端・結腸粘膜組織の免疫染色にてCMV感染細胞を検出したため、CMV腸炎と診断し、ganciclovirによる治療を開始した。しかしその後も臨床所見が改善しなかったため、foscarnetとの併用療法を開始したものの、徐々に多臓器不全が進行し、第34病日に死亡した。
【結論】CMV腸炎は一般に免疫不全患者で発症すると考えられているが、明らかな免疫不全が指摘できない患者での発症も近年報告されている。本症例は明らかな免疫不全を認めない結核の重症例であり、腸結核やCD腸炎が下痢の鑑別診断の上位に挙げられるが、CMV腸炎も念頭においておく必要がある。このような症例では診断ための適切な検査を行い、早期に治療を開始する事が重要であると考えられた。