第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

感染・敗血症 症例

[O17] 一般演題・口演17
感染・敗血症 症例01

Fri. Mar 1, 2019 10:00 AM - 10:50 AM 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:小林 敦子(宝塚市立病院感染対策室)

[O17-5] 顔面壊死性筋膜炎の一例

鍵本 奈緒1, 野島 剛2, 畠中 茉莉子2, 内藤 麻巳子2, 上田 浩平2, 田村 竜2, 盛實 篤史2, 齋坂 雄一2, 石原 潤子2, 西田 武司2 (1.高知医療センター 初期臨床研修医, 2.高知医療センター救命救急センター)

【はじめに】壊死性筋膜炎は、皮下組織の壊死が筋膜に沿って急激に拡大し、進行すると多臓器不全やショックを引き起こす重篤な感染症である。発症早期には蜂窩織炎との鑑別が難しく、補助的診断ツールとしてLRINEC scoreが有用との報告がある。好発部位は四肢が多く全体の80%を占め、顔面や会陰部、頚部にも発症する。また、基礎疾患として主に糖尿病や肝障害、悪性腫瘍の合併が見られる。致死率は約50%前後と高く、早期の診断と適切な治療を行うことが重要であるが、非特異的症状と病勢の急激な進行などにより診断が遅れてしまうことも多い。今回、我々は未治療糖尿病を基礎疾患に持ち、治療に難渋した顔面壊死性筋膜炎の症例を経験したので報告する。【症例】未治療糖尿病の既往がある70歳男性。2018年8月、発熱を主訴に搬送された。来院時ショックバイタルであったことに加え、顔面には悪臭と黒色変化を伴う壊死組織を認め、CT検査において皮下組織内のガス貯留像がみられた。LRINEC scoreは8点で壊死性筋膜炎が疑われたため緊急デブリードマンを施行し、敗血症性ショックの治療に準じた治療を開始した。第6病日に再度発熱を認め、再評価の画像検査において、膿瘍が再発しており再度手術を施行した。第12病日に血液培養から酵母様真菌が検出され、血液検査にてβDグルカンの上昇を認めたため真菌を確認したところ、Candida属が検出された。抗真菌薬を追加投与して経過を診ていたが明らかな感染源は不明で、炎症反応は改善しなかったため、第22病日に縫合創の開創を再度行った。創部からは膿汁を認めた。その後徐々に循環動態が破綻し、第26病日に永眠された。【考察】壊死性筋膜炎は浅筋膜から皮下組織に広範な壊死を認める重傷感染症で、主に四肢に好発する。頭頸部領域における壊死性筋膜炎の頻度は全体の3~4%と比較的稀ではあるが、早期診断と適切な治療を行わなければ多臓器不全やDICをきたし、高い致死率を示す。今回のように糖尿病などの基礎疾患を合併している症例では感染のコントロールが困難であり、LRINEC scoreなどを用いた早期診断に加えて、早期治療と敗血症に準じた全身管理、血糖コントロールを行っていくことが重要であると考えられた。