[O18-2] 迅速なドレナージを行い、良好な転機を辿った降下性壊死性縦隔炎の一例
【背景】
降下性壊死性縦隔炎(DNM: Descending necrotizing mediastinitis)は歯性感染や咽頭膿瘍、頚部外傷などに伴う膿瘍が筋膜間隙に沿って縦隔へ至る炎症性疾患である。画像診断が発展した近年でも死亡率は約18%と高い。救命のためには的確な診断に加え、迅速かつ適切なドレナージが必要である。
【症例】
症例は76歳男性。喫煙歴以外に特に生活歴、既往歴はない。38.8℃の発熱と左頚部の腫脹を主訴に近医を受診した。急性化膿性扁桃腺炎の診断で入院加療を提案されるも本人の外来通院の希望のため、LVFX 500mg/1錠の内服での治療となっていた。その後症状の改善乏しく、4日後には食事摂取が不良となり、呼吸苦が出現し、意識朦朧となり、救急要請で一度近医搬送の上、精査加療目的に当院へ紹介搬送となった。
来院時、GCS E4V4M5と見当識障害を伴っており指示も入りづらい状態であった。循環呼吸状態は保たれていた。左頚部の発赤・腫脹と軟口蓋麻痺を認めた。喉頭ファイバーでは左咽頭側壁の腫脹を認めたが、声帯の可動性は良好で、喉頭蓋の浮腫は認めなかった。CTでは、頬骨上縁から食道近傍を通じて後縦隔まで広範囲にairを伴う膿瘍を疑う所見を認めた。DNMの診断とし、ドレナージと抗菌薬での治療を行うこととした。CT検査後、2時間で緊急ドレナージを開始、縦隔に対しては右開胸アプローチで前縦隔・上縦隔・後縦隔の切開排膿し、頚部に対しては膿瘍形成をしている部分をそれぞれ切開排膿を行った。術中気管切開術を施行した上で、術後全身管理目的に集中治療室へ入室となった。術中所見では下顎骨周囲で口腔と交通しており、本症例は歯性感染が侵入門戸として疑わしかった。初回手術から18時間後にCTを再検し、追加のドレナージ術を行った。術後肺炎の合併もきたし人工呼吸器離脱まで時間を要したが、第33病日に人工呼吸器離脱し、第44病日に集中治療室を退室した。第121病日にリハビリ病院へ転院後、第173病日に自宅退院となった。
【結語】
診断後2時間での迅速なドレナージを行うことができ、良好な転帰を辿ったDNMの一例を経験した。DNMに対するドレナージは重要かつ早期に行うべきと言われており、診断後は速やかにドレナージを行い、その上での抗菌薬治療を含めた全身管理が望ましいと考える。
降下性壊死性縦隔炎(DNM: Descending necrotizing mediastinitis)は歯性感染や咽頭膿瘍、頚部外傷などに伴う膿瘍が筋膜間隙に沿って縦隔へ至る炎症性疾患である。画像診断が発展した近年でも死亡率は約18%と高い。救命のためには的確な診断に加え、迅速かつ適切なドレナージが必要である。
【症例】
症例は76歳男性。喫煙歴以外に特に生活歴、既往歴はない。38.8℃の発熱と左頚部の腫脹を主訴に近医を受診した。急性化膿性扁桃腺炎の診断で入院加療を提案されるも本人の外来通院の希望のため、LVFX 500mg/1錠の内服での治療となっていた。その後症状の改善乏しく、4日後には食事摂取が不良となり、呼吸苦が出現し、意識朦朧となり、救急要請で一度近医搬送の上、精査加療目的に当院へ紹介搬送となった。
来院時、GCS E4V4M5と見当識障害を伴っており指示も入りづらい状態であった。循環呼吸状態は保たれていた。左頚部の発赤・腫脹と軟口蓋麻痺を認めた。喉頭ファイバーでは左咽頭側壁の腫脹を認めたが、声帯の可動性は良好で、喉頭蓋の浮腫は認めなかった。CTでは、頬骨上縁から食道近傍を通じて後縦隔まで広範囲にairを伴う膿瘍を疑う所見を認めた。DNMの診断とし、ドレナージと抗菌薬での治療を行うこととした。CT検査後、2時間で緊急ドレナージを開始、縦隔に対しては右開胸アプローチで前縦隔・上縦隔・後縦隔の切開排膿し、頚部に対しては膿瘍形成をしている部分をそれぞれ切開排膿を行った。術中気管切開術を施行した上で、術後全身管理目的に集中治療室へ入室となった。術中所見では下顎骨周囲で口腔と交通しており、本症例は歯性感染が侵入門戸として疑わしかった。初回手術から18時間後にCTを再検し、追加のドレナージ術を行った。術後肺炎の合併もきたし人工呼吸器離脱まで時間を要したが、第33病日に人工呼吸器離脱し、第44病日に集中治療室を退室した。第121病日にリハビリ病院へ転院後、第173病日に自宅退院となった。
【結語】
診断後2時間での迅速なドレナージを行うことができ、良好な転帰を辿ったDNMの一例を経験した。DNMに対するドレナージは重要かつ早期に行うべきと言われており、診断後は速やかにドレナージを行い、その上での抗菌薬治療を含めた全身管理が望ましいと考える。