[O18-6] ヒト咬傷を契機に発症した劇症型溶血性レンサ球菌感染症の1症例
【背景】劇症型溶血性レンサ球菌感染症は致命的になり得る重症病態として知られるが、ヒト咬傷を契機に発症した報告は稀である。今回われわれはヒト咬傷により発症した劇症型溶血性レンサ球菌感染症の貴重な症例を経験したので報告する。【臨床経過】患者は39歳男性。既往歴なし。居宅訪問介護の仕事中に自閉症を患う被介護者から左手首に強く咬みつかれた。負傷後も介護業務を続けて完遂した。翌日から左手関節腫脹、倦怠感、発熱を認めたが、体調不良を押して勤務を続けた。受傷2日後、当院にショック状態で救急搬送となった。左手関節背尺側に深い噛み口を伴う著しい発赤腫脹を認めた。血液検査上、腎傷害と凝固障害が明らかになり、ヒト咬傷による蜂窩織炎、敗血症性ショックと診断した。ICUで全身管理を開始し、創部洗浄ドレナージと抗菌薬の全身投与を行った。左手創部と血液培養からA群β溶連菌Streptococcus pyogenesが検出され、咬傷感染による劇症型溶血性レンサ球菌感染症と考えられた。デブリードマン手術と植皮術を施行し、治療経過良好にて第49病日に独歩退院した。【結論】A群溶連菌は口腔内に常在しており、ヒト咬傷の原因病原体となる。咬傷により劇症型溶血性レンサ球菌感染症を発症するリスクを医療・介護従事者は強く認識すべきである。