[O21-4] 救命センターにおける積極的監視培養からみた薬剤耐性菌院内感染対策
【背景】救命センターでの感染アウトブレイクは、地域の救急医療体制に大きな影響を与える。当救命救急センターでは、院内感染に対する多角的アプローチの一つとして、積極的監視培養(Active Surveillance Culture, 以下、ASC)を行っている。【目的】ASCの結果から薬剤耐性菌の発生動向を調査し、院内感染対策を講じる一助とする。【対象】2016年4月から2年間の救命センター入室患者のうちASCを行った2093名(実施率≧90%)のASC結果。ASCは、原則、搬入時と以降1週間毎に、鼻腔、尿、便培養を必須として施行。【方法】MRSAとESBLを検討対象とし、730日間の入室患者数、稼働病床数と稼働率、新規発生、保菌圧(保菌/稼働病床数)、持ち込み耐性菌(以下、持ち込み)、検出部位を調査した。入室48時間以内の検出を「持ち込み」と判断した。【結果】対象2093名のうち、MRSAは92件、ESBLは109件に検出し、新規発生は各々91件、53件。MRSA新規発生は、持ち込み患者の入院2週以内の発生が73%と2週以後の発生に比べ有意に(P<0.01)高く、ESBLも同様(83%, P<0.01)であった。入室から新規発生まで中央値でMRSA 9日、ESBL 10日であった。MRSA保菌圧は、新規発生と正の相関(r=0.48, P<0.01)を、稼働病床数とは負の相関(r=-0.44, P<0.01)を示し、76%が上気道からの新規検出?であった。ESBL保菌圧は、新規発生(r=0.33, P<0.05)、持ち込み(r=0.48, P<0.01)、稼働病床数(r=0.4, P<0.01)とそれぞれ正の相関があり、96%が尿、便からの新規検出であった。【結論】耐性菌MRSA, ESBLの新規発生の多くが持ち込み患者入室2週以内の発生であり、新規発生は入室後10日前後であることから、入室後2週間の感染対策が最重要と考えられた。MRSAは上気道、ESBLは排泄物と主な検出部位は異なるが、共に保菌圧の上昇に注意が必要と考えられた。一方でMRSAでは、稼働病床減少時のより濃厚な医療と看護ケアも保菌圧上昇に関連している可能性が否定できなかった。継続的なASC評価をもとに、その特徴に基づいた水平伝播に対する予防策を搬入時より講じる必要がある。