第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

外傷・熱傷 研究

[O24] 一般演題・口演24
外傷・熱傷 研究01

2019年3月1日(金) 17:10 〜 17:50 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:松田 潔(日本医科大学武蔵小杉病院 救命救急センター)

[O24-2] 出血性ショックの外傷性凝固障害に対するDamage Control Interventional Radiology (DCIR)の有効性の検討

折田 智彦, 船曵 知弘, 松本 松圭, 豊田 幸樹年, 廣江 成欧, 風巻 拓, 中道 嘉, 矢島 慶太郎, 山崎 元靖, 北野 光秀 (済生会横浜市東部病院 救命救急センター)

【背景】大量出血を伴う重症外傷において、消費性凝固障害や希釈性凝固障害の予後への影響は広く認識され、早期止血戦略としてdamage control surgery(DCS)が、早期集中治療戦略としてdamage control resuscitation等が提唱・実践され様々な試みが報告されている。重症外傷の初期治療のポイントの一つは時間と凝固障害を意識したDamage Controlだろう。一方で早期止血戦略としてInterventional Radiology (IVR)の有効性も認知されつつあり、DCS or IVRからDCS and IVRのハイブリッド治療へ展開しつつある。しかしそのIVRは待機症例手法と同様の事がまだ多く、外傷IVRとして時間と凝固障害を意識したDamage control Interventional Radiology(DCIR)の是非は未知の領域である。
【目的】外傷性大量出血症例に対し、時間と凝固障害を意識したDCIRは外傷性凝固障害改善に寄与し、生命予後の点で安全かを検証する。
【方法】単施設後方視観察研究。当救命センターに搬入され出血性ショックを呈し、緊急IVRを行った重症体幹部外傷症例を対象に、通常IVR施行群(IR群)とDCIR施行群(DCIR群)の二群比較を行った。DCIRは手技時間短縮を優先し、非選択的塞栓や再IVRを許容する手技とした。Primary endpointは受傷24時間後の凝固障害改善度。Secondary endpointsは24時間および28日生命予後。
【結果】IVR群(n=27)vs. DCIR群(n=21)。全例鈍的外傷でトラネキサム酸投与とMTP発動あり。解剖学的重症度(ISS) (IR群vs. DCIR群;27.6 vs 40.9, p<0.01)、生理学的重症度(RTS) (6.98 vs 5.54, p<0.01)ともにDCIR群で有意に高く、予測生存率(Ps)は0.65vs. 0.48,n.s.だった。超急性期(搬入後平均2.8h)の凝固障害発生率(フィブリノゲン(Fib)<150mg/dlとした)はDCIR群で有意に高く(67%vs. 91%, p<0.05)、実測Fibは低く(176.0mg/dl vs. 118.6, p<0.05)、急性期DICスコアでのDIC発生率は両群100%(スコア5.5vs. 5.9,n.s.)。フィブリノゲン製剤はIR群11% vs. DCIR群33%(p=0.06)で使用され、24時間総輸血量に差異はなかった。24時間後凝固障害は両群改善し(改善率100% vs. 95%,n.s.、Fib値;330.9 vs. 307.0, n.s.)、24時間及び28日生存率(重症頭部外傷死を除く)に差異はなかった(共に100% vs. 90%,n.s.)。
【結論】重症度が高く凝固障害の強い重症外傷症例に対するDCIRは、外傷性凝固障害の早期改善に寄与し、生命予後を悪化させず、有効かつ安全な外傷治療の一戦略の可能性がある。