第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

外傷・熱傷 研究

[O25] 一般演題・口演25
外傷・熱傷 研究02

2019年3月1日(金) 17:50 〜 18:30 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:川副 友(東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座 救急医学分野)

[O25-3] 重症外傷におけるICU入室例の特徴

問田 千晶1,2, 六車 崇1,2, 余湖 直紀1,2, 嶽間澤 昌泰1,2, 篠原 真史1,2, 竹内 一郎1,2 (1.横浜市立大学附属市民総合医療センター 高度救命救急センター, 2.横浜市立大学医学部 救急医学教室)

【背景】重症外傷に対するICU入室基準として用いることが可能な客観的な指標は存在せず、十分な検討は実施できていない。
【目的】Injury severity score(ISS)が16以上の重症外傷におけるICU入室例の特徴を明らかにすること。
【方法】2012-2016年の日本外傷データバンク登録データ(N=55,626)のうち、ISSが16以上の重症外傷かつ入院した症例18,445例を対象とし、後方視的観察研究を行った。
ICU入室群と非入室群の2群に分類し比較した。また、従属変数をICU入室とした多変量解析を行い、ICU入室に寄与する因子を検証した。
【結果】ICU入室群は13,799例(対象の75%)。対象例の年齢は中央値64歳(四分位 43-77歳)、ISSは21(17-26)、TRISS法による予測生存率は93%(82-96%)、入院日数は17日(7-37日)であった。
非入室群と比べ、入室群で病院前処置の実施率(入室群 vs. 非入室群 94% vs.90%、p<0.05)、ISSの中央値(22 vs.17%、p<0.05)、多発外傷(40% vs.23%、p<0.05)、FASTの陽性率(9% vs.3%、p<0.05)、CT検査の実施率(97% vs.95%、p<0.05)、搬入後24時間以内の緊急輸血の実施率(27% vs.5%, p<0.05)、緊急手術の実施率(47% vs.30%、p<0.05)、退院時死亡率(13% vs. 7%、p<0.05)が高かった。
多変量解析の結果、病院前処置の実施[Odds ratio:1.3(95%信頼区間:1.1-1.4)、p<0.05]、多発外傷[1.5 (1.4-1.7)、p<0.05]、FAST陽性[1.4 (1.2-1.7)、p<0.05]、CT検査の実施[2.3 (1.9-2.7)、p<0.05]、緊急輸血の実施[5.5 (4.7-6.4)、p<0.05]、緊急手術の実施[1.3 (1.2-1.4)、p<0.05]が、ICU入室に寄与していた。
【考察】重症外傷においてICUへ入室する症例の特徴を明らかにした。重症外傷例においては、緊急で検査や処置が必要な症例、および緊急で外科的介入や侵襲的治療が必要な症例が高率にICUへ入室していた。
発表では、年齢層別、損傷形態別、および重症度別のサブクラス解析の結果も提示し、重症外傷のICU入室基準策定に関する問題点と課題を考察する。