[O29-2] CKDStage G5で急性心不全を発症に対しV2受容体拮抗薬を含む利尿薬併用療法で血液浄化施行せず改善した1例
【目的】慢性腎臓病に心不全を合併すると利尿薬の効果は限られ、血液浄化が必要となる場合が多い。しかし、慢性腎臓病患者において利尿薬の効果は限られていると言われているが、自尿が保たれている場合は利尿薬多剤併用により体液コントロールが可能となると考えている。今回、透析導入直前の慢性腎臓病Stage G5に急性心不全を合併した患者にトルバプタンを含む利尿薬の併用療法で血液浄化を施行せず改善した1例を経験したので報告する。【症例】ADL自立した慢性腎臓病(Cre:5.81mg/dl、eGFR:8ml/分)、高血圧症、虚血性心疾患の既往のある69歳男性。夜間に突然発症した呼吸苦で当院に救急搬送。病着時、血圧:250/102mmHg、心拍数:107回/分、SpO2:88%(リザーバーマスク10L/分)であった。慢性腎臓病に伴う体液貯留とCS1+2の急性心不全の診断で入院となった。入院時の採血でCre:5.09mg/dl、eGFR:10ml/分、BNP:1024.1pg/mlであった。前負荷・後負荷解除目的にニトログリセリン、呼吸補助でNIV (CPAP 10 FiO2 0.6)使用した。酸塩基平衡、電解質異常での緊急透析適応はなく、慢性腎臓病の体液コントロールに関しては自尿が500~1000ml/日であったため、入院1日目にフロセミド60mg を1日3回静注とトリクロルメチアジド2mg、トルバプタン15mgの内服を開始した。1時間で200mlの利尿を認め酸素化も改善傾向であり、NIV離脱し酸素投与となった。2日目にも同様の利尿薬を使用し、ニトログリセリン終了後も血圧は安定していた。入院2日目で-2550ccと利尿良好であり、酸素投与とフロセミド静注を終了し、同日に退院となった。【結論】慢性腎臓病では水分納出管理が重要であるものの、利尿薬の効果や使用できる薬物に限りがある。トルバプタンは慢性腎臓病患者で慢性心不全を合併している患者にトルバプタンを使用することで短期的な利尿効果を期待できるという報告があるが、急性心不全を併発している患者や慢性腎臓病Stage G5の患者を対症とした報告は少ない。今回、慢性腎臓病のうっ血と急性心不全に対し、血管拡張薬、NIVによる循環呼吸管理を行いつつ、慢性腎臓病 Stage5で自尿が保たれている患者においては、酸塩基平衡・電解質の絶対的適応がない場合は、トルバプタンを含む複数の利尿薬併用療法により透析導入時期を遅らせることができる可能性がある。