第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

一般演題(口演)

内分泌・代謝 症例

[O3] 一般演題・口演3
内分泌・代謝 症例01

Fri. Mar 1, 2019 3:05 PM - 4:05 PM 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:蒲地 正幸(産業医科大学病院 集中治療部)

[O3-3] 遅発性に著明な高Ca血症を来した、急性腎傷害を合併した横紋筋融解症の一例

長友 一樹, 星野 哲也, 小山 泰明, 榎本 有希, 下條 信威, 河野 了, 井上 貴昭 (筑波大学附属病院 救急集中治療科)

【背景】横紋筋融解症では,急性期には壊死筋肉へCaが沈着することで低Ca血症を呈し,その後遅発性に血中に動員されることで高Ca血症を来すとされる.今回,急性腎傷害(AKI)を合併した横紋筋融解症患者において,低Ca血症補正後約1ヶ月の期間をおいて高Ca血症を呈した1例を経験したため報告する.【臨床経過】症例は特記すべき既往疾患のない43歳男性.食思不振と倦怠感を主訴に前医を受診した際(第0病日),著明な高血糖を認め糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と診断された.大量補液とインスリン持続注射が開始されたが,第1病日に血圧低下・酸素化維持困難となり,気管挿管の上当院へ搬送された.来院時からCK高値を認め,第5病日にCK 47500U/lまで上昇した.DKAに合併した横紋筋融解症と診断した.同時に補正Ca 7.2 mEq/dl(イオン化Ca 0.80 mmol/L)の低カルシウム血症を認め,グルコン酸カルシウムで補正を行った.イオン化Ca 1.00mmol/Lを目指して積極的に補正を行ったが改善は乏しかった.来院時からCre 3 mg/dlのAKIを合併していたが,第6病日には乏尿となり,腎代替療法を導入した.第29病日に腎代替療法を離脱したが,血清Caは徐々に上昇し,第39病日には補正Ca 17.5mEq/dlの著明な高Ca血症を認めた.同日施行したCTでは上下肢の筋肉に広範な転移性石灰化が認められた.高Ca血症の原因検索では,PTH,PTHrP,活性型ビタミンDは低値であり,腫瘍性疾患も腫瘍マーカー・全身CT・骨髄穿刺所見から否定的だった.CT所見で筋肉内に転移性石灰化を認めており,横紋筋融解症かつAKIの利尿期に見られる高Ca血症と診断した.その原因としては,横紋筋融解症急性期でのCa補正に加え,腎代替療法離脱によるCa排泄の低下が関与していると考えた.生理食塩水・エルシトニン・プレドニン・ゾレドロン酸の投与を行い,徐々にCaは正常値に復帰した.その後のフォローCTでは転移性石灰化の改善を認めた.【結語】AKIを合併した横紋筋融解症において,遅発性に高Ca血症を来した1例を経験した.急性期の低Ca血症の補正が,高Ca血症の増悪を来したと考えた.集中治療領域では,頻回な採血や血液ガス分析によって電解質モニタリングが可能だが,特にCaの補正においては検査値の適正化を目的とするのではなく,病態を見て判断するべきである.