第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

一般演題(口演)

内分泌・代謝 症例

[O3] 一般演題・口演3
内分泌・代謝 症例01

Fri. Mar 1, 2019 3:05 PM - 4:05 PM 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:蒲地 正幸(産業医科大学病院 集中治療部)

[O3-5] TRPM6遺伝子変異を有する低Mg血症の一例

尾崎 健太郎1, 高木 大輔1, 森 崇寧2, 具嶋 泰弘1, 前原 潤一1 (1.済生会熊本病院 救急総合診療センター, 2.東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科腎臓内科学)

【はじめに】成人の低Mg血症は,摂取不足あるいはアルコール多飲に伴う吸収障害によるものが多いが,原因が特定できない症例も少なくない。今回,尿細管上皮でのMg輸送に関与するTRPM6遺伝子に変異を認めた成人低Mg血症の一例を経験したので報告する。【症例】68歳,女性。主訴は意識障害。約1ヶ月前から電話がかけられない,洗濯機が使えないなどの認知機能低下が出現した。その後次第に体動困難,意識障害を呈し当院に救急搬送された。既往や内服,飲酒を含めた生活歴に特記事項は認めなかったが,幼少期より学力は高い方ではなかったとのことであった。来院時意識レベルはJCS II-20,体温37.2℃と微熱を認めたがその他バイタルサインは問題なかった。理学所見上BMI 14.9とやせを認め,Trousseau徴候及びChvostek徴候を呈していた。頭部MRI及び髄液検査では特記所見を認めず,血液検査で著明な低Ca血症(補正値で6.0 mg/dl),低Mg血症を認め,意識障害の原因は低Ca血症と診断した。中心静脈より高濃度Ca持続投与を行ったところ,Ca値の改善とともに意識レベルの改善を認めた。当初は栄養障害による低Mg血症を疑ったが,全身状態及び食事摂取量が安定した後もMg及びCaの低値は遷延し, 中心静脈ラインを用いた高濃度電解質輸液による補正を要した。副甲状腺ホルモンは保たれており,尿中Mg排泄が亢進していたことから,遺伝性低Mg血症を疑い遺伝子検査を施行した。結果, TRPM6遺伝子に希少ヘテロ接合性ミスセンス変異が同定された。経口Mg製剤及び活性型ビタミンD製剤を投与し,Ca値及びMg値は安定したため入院33日目で転院となった。【考察】今回判明した遺伝子変異は検索し得た範囲で報告例がない。通常,遺伝性低Mg血症は常染色体劣性遺伝で乳児期より重度の症状を呈する。しかし本症例のようにヘテロ接合性変異のみであれば,低Mgの程度が軽く成人期に症状が出現するまで見逃されている可能性がある。原因不明の低Mgを認めた場合、成人発症であっても遺伝子検査を行う意義はあると考える。