[O3-6] 重篤な臓器不全を呈して致死的な肝不全が著明となった甲状腺クリーゼの一例
【背景】甲状腺クリーゼは、コントロール不良の甲状腺基礎疾患がある患者にストレスによる甲状腺ホルモンの作用過剰が生じ、代償機構が破綻して多臓器不全となる。致死率は10%を超え、約20%は救急搬送されるため、多臓器不全の患者では念頭に置くべきである。敗血症の症状を呈し、肝不全が著明となった甲状腺クリーゼを経験したため、報告する。
【臨床経過】83歳の女性。来院3日前から喀痰の増加、食欲不振を自覚していた。来院当日、嘔気が出現し、徐々に呼吸困難感が著明となったため救急要請となった。
来院時意識レベルGCS6(E4V1M1)、脈拍131/min、血圧117/94mmHg、体温37.4℃、呼吸数44/min、SpO2 95%(room air)とqSOFA2点であり、低血糖(13mg/dl)を認めていたため、敗血症と相対的副腎不全を考え初療を行った。血液検査は乳酸値の上昇と血小板の低下を認め、血圧の維持に昇圧剤を要したため敗血症性ショックの診断でICUに入室した。
入室後、乳酸アシドーシスは進行し心停止したが、二次救命処置の結果心拍再開した。人工呼吸管理、昇圧剤、抗菌薬、副腎皮質ホルモン投与などの集中治療を行ったところ徐々に全身状態は改善し、第3病日には抜管できた。血液検査の結果、甲状腺機能亢進症が明らかとなり、TSHレセプター抗体陽性からバセドウ病の診断のもと、チアマゾールの内服を開始した。第9病日に一般床へ移動したが、肝逸脱酵素は入院時から一貫して上昇していた。腹部超音波検査ではうっ血肝の所見であり、敗血症による肝血流障害を考慮した。第17病日にトランスアミナーゼは正常範囲内まで改善したが、ビリルビン値は増加の一途を辿り、最終的に34mg/dlまで上昇した。意識障害、呼吸不全が進行し、抗菌薬治療や呼吸管理を行った全身状態の改善はなく、第46病日に逝去された。
血液培養は陰性であり、臓器不全の経過が敗血症では説明できなかったため、臓器不全の原因は甲状腺クリーゼであったと考えた。
【結論】原因不明の多臓器不全、とりわけ肝不全を呈する敗血症様の症状を呈する患者には甲状腺クリーゼを鑑別にあげ、治療を開始するべきである。
【臨床経過】83歳の女性。来院3日前から喀痰の増加、食欲不振を自覚していた。来院当日、嘔気が出現し、徐々に呼吸困難感が著明となったため救急要請となった。
来院時意識レベルGCS6(E4V1M1)、脈拍131/min、血圧117/94mmHg、体温37.4℃、呼吸数44/min、SpO2 95%(room air)とqSOFA2点であり、低血糖(13mg/dl)を認めていたため、敗血症と相対的副腎不全を考え初療を行った。血液検査は乳酸値の上昇と血小板の低下を認め、血圧の維持に昇圧剤を要したため敗血症性ショックの診断でICUに入室した。
入室後、乳酸アシドーシスは進行し心停止したが、二次救命処置の結果心拍再開した。人工呼吸管理、昇圧剤、抗菌薬、副腎皮質ホルモン投与などの集中治療を行ったところ徐々に全身状態は改善し、第3病日には抜管できた。血液検査の結果、甲状腺機能亢進症が明らかとなり、TSHレセプター抗体陽性からバセドウ病の診断のもと、チアマゾールの内服を開始した。第9病日に一般床へ移動したが、肝逸脱酵素は入院時から一貫して上昇していた。腹部超音波検査ではうっ血肝の所見であり、敗血症による肝血流障害を考慮した。第17病日にトランスアミナーゼは正常範囲内まで改善したが、ビリルビン値は増加の一途を辿り、最終的に34mg/dlまで上昇した。意識障害、呼吸不全が進行し、抗菌薬治療や呼吸管理を行った全身状態の改善はなく、第46病日に逝去された。
血液培養は陰性であり、臓器不全の経過が敗血症では説明できなかったため、臓器不全の原因は甲状腺クリーゼであったと考えた。
【結論】原因不明の多臓器不全、とりわけ肝不全を呈する敗血症様の症状を呈する患者には甲状腺クリーゼを鑑別にあげ、治療を開始するべきである。