第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

消化管・肝・腎 研究

[O30] 一般演題・口演30
消化管・肝・腎 研究

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:50 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:小野寺 悠(山形大学医学部附属病院高度集中治療センター)

[O30-3] ミトコンドリア肝症と肝移植の現状

松永(藤浪) 綾子1, 伏見 拓矢1, 志村 優1, 冨永(小川) 美菜子1, 市本 景子1, 鶴岡 智子1, 木下 善仁2, 岡崎 康司2, 大竹 明3, 村山 圭1 (1.千葉県こども病院 遺伝診療センター 代謝科, 2.順天堂大学 難病の診断と治療研究センター, 3.埼玉医科大学 小児科)

【背景】ミトコンドリア異常症(Mitochondrial Disorder :MD)は5000人に1人の頻度で発症する先天代謝異常症である。そのうち、肝臓が主な罹患臓器である一群をミトコンドリア肝症と呼ぶ。今回、我々はミトコンドリア肝症の診断となった症例に対して、発症年齢、病因遺伝子、肝移植の有無や予後の検討を行った。【対象と方法】2007年より2018年9月においてMDの検索依頼を受けた中で、生化学診断にてMDの診断に至った818例を対象とした。【結果】MDの診断に至った818例のうち85例(10%)がミトコンドリア肝症の診断となった。男女比は41:44であり、発症年齢は日齢0から30歳、中央値は3ヶ月であった。また死亡例は26例(31%)であった。ミトコンドリアDNAの複製や核酸供給機構の異常などによってミトコンドリアDNA量が過度に減少する、ミトコンドリアDNA枯渇症候群(MTDPS)は19例に認めた。そのうち14例で病因遺伝子が同定されており、MPV17, DGUOK, POLGがそれぞれ9例、4例、1例であった。MPV17遺伝子異常ではc.451dupC (p.L151PfsX39)の変異を9例中7例で認めた。この変異は韓国でも見つかっており、東アジアにおけるcommon mutationであることがわかった。臨床型としては最重症であり、重篤な経過を辿ることが多い。MTDPS 19例のうち14例が死亡していた。肝症全体で肝移植は18例で施行されており、そのうち8例が移植後に死亡しており、全例がMTDPSの症例であった。肝移植を行った症例のうち病因遺伝子が確定した症例は11例であり、MPV17, DGUOK, TRMU, BCS1Lがそれぞれ6例、3例、1例、1例であった。【考察】肝移植後の死亡率は44%であり、特にMTDPSの症例は予後が悪い(9例中8例死亡)。その一方で乳児期に肝移植を行い現在成人に達しているMTDPS(MPV17異常)症例も存在する。また、BCS1L異常症や可逆的なミトコンドリア肝症として知られているTRMU異常症例は、乳児期早期に肝不全をきたし、肝移植を行い、良好な経過を辿っている。このように、一例一例の症状や病態に応じて治療方針を決定していく必要がある。【まとめ】遺伝子診断で遺伝子変異が確定すれば、自然経過や予後をある程度予測することは可能である。急性肝不全の場合、肝移植をする時に遺伝子までは確定していない症例がほとんどである。移植後であっても呼吸鎖酵素解析、酸素消費量測定などの生化学検査や遺伝子検査など分子学的診断を行うことが重要である。