[O30-6] 当施設における下部消化管出血症例の検討
<目的>当施設の下部消化管出血症例の概要と治療の現状を明らかにする。<対象>1987年から2017年までに当施設で経験した下部消化管出血症例839例。同時期に経験した上部消化管出血症例は4188例で、全消化管出血のうち下部消化管出血の割合は16.7%であった。<結果>下部消化管出血の内訳は大腸憩室169例、20.1%、痔112例、13.3%、虚血性大腸炎108例、12.9%、急性出血性直腸潰瘍98例、11.7%、大腸癌63例、7.5%、出血性大腸炎60例、7.2%、医原性48例、5.7%、大腸ポリープ40例、4.8%、小腸出血45例、5.4%、大腸潰瘍32例、3.8%等であった。この内内視鏡治療例は急性出血性直腸潰瘍75例、大腸憩室52例、医原性46例、ポリープ34例、痔27例、大腸潰瘍20例、小腸出血8例、その他9例の271例、32.3%であった。急性出血性直腸潰瘍の止血はヒータープローブで行い、再出血を11例に認め、原病死が14例であった。医原性はポリペクトミーやEMR、外科手術後の出血で、クリップを用いて全例止血可能であった。ポリープはポリペクトミーを施行して治療したが、先天性疾患で再発を認めた。大腸憩室は36例にクリップを用いたが8例止血不能で、3例に手術、5例にIVRを施行した。EBLは16例に施行し、1例再出血した。痔は24例にEHL、3例にCAによる硬化療法を施行した。硬化療法の2例は再出血を繰り返して死亡した。大腸潰瘍は18例にヒータープローブ、2例にクリップを使用した。ヒータープローブの1例が穿通し、手術に移行した。<まとめ>下部消化管出血の病態は多岐にわたり、内視鏡止血法も様々であった。内視鏡治療成績はおおむね良好であったが、先天性疾患では再発を繰り返した。憩室出血の中には他の治療に移行する症例が散見された。