[O34-3] ニボルマブによる化学療法中に心筋炎を発症した一例
【背景】ニボルマブ投与により心筋炎をきたす頻度は0.1%と低く、報告も少ない。今回我々はニボルマブ投与による心筋炎が疑われた症例を経験したので報告する。【臨床経過】68歳男性、離島在住。胃癌術後であり、ニボルマブによる化学療法を行っていた。ニボルマブ2クール目終了後から、眼瞼下垂、複視、上肢筋力低下を認め、ニボルマブに関連する重症筋無力症が疑われた。その後、EF46.8% 、3度房室ブロック、体重増加、下腿浮腫、呼吸苦出現するなど心不全症状が出現し、その原因としてニボルマブに関連する心筋炎の合併が疑われた。房室ブロックに対する一時ペーシング、カテコラミン、大動脈バルーンパンピング(IABP)による心補助、人工呼吸管理を施行したが、状態改善なく、経皮的心肺補助装置(VA-ECMO)導入の可能性が考えられ、当院救急集中治療科に紹介となった。心筋炎に対し、ステロイドパルス療法、血漿交換療法、大量免疫グロブリン療法を行い、入室時35%と低値であったEFが51%まで改善を認めた。IABP離脱、カテコラミンも終了でき、VA-ECMOを導入せずに経過を見ることができたが、一時ペーシングのレートを30台に低下させても自己脈がなく、恒久的ペースメーカー植込みの方針となった。ペースメーカー挿入後、離島へ搬送の予定である。【結論】ニボルマブ投与中に心筋炎を発症した一例を経験した。本性例ではステロイドパルス療法、血漿交換療法、大量免疫グロブリン療法を行うことでVA-ECMOを使用せずに救命することができた。ニボルマブによる心筋炎の頻度は0.1%と非常に稀ではあるが、心機能低下、不整脈による死亡例の報告がある。ニボルマブ使用中に心筋炎を起こすことがあるため、呼吸困難や胸痛、胸部不快感などの症状が出現したときには心筋炎を疑い専門医へ相談し、症状が重篤な場合は、VA-ECMOなどを導入できる施設へ搬送することが重要であると考える。