第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 症例

[O35] 一般演題・口演35
循環 症例02

2019年3月1日(金) 10:00 〜 11:00 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:畠山 登(愛知医科大学)

[O35-4] 高血糖高浸透圧症候群に合併した冠攣縮性狭心症の一例

桑原 政成1,2, 児玉 隆秀2, 森瀬 昌裕2, 山田 貴信2, 小宮山 知夏2, 播磨 綾子2, 富田 康弘2, 藤本 陽2, 三谷 治夫2, 石井 健1 (1.虎の門病院 集中治療科, 2.虎の門病院 循環器センター内科)

症例は57歳男性。来院1年前に右後頭葉を中心としたアテローム血栓性脳梗塞で入院の既往があり、クロピドグレルを内服中。また喫煙指数700の喫煙歴と、高血圧と脂質異常症に対して内服加療中であった。糖尿病については、HbA1c6.5%と境界型糖尿病の疑いを指摘されていたが加療歴はなかった。来院前日、会社で体調不良を訴え、午前中で早退。来院当日朝から、調子が悪く会社を休んでいたが、昼過ぎから起き上がることもできなくなっため救急車にて当院搬送となった。来院時、GCSがE4V3M6、血圧108/77mmHg、脈拍115回/分、呼吸数19回/分、SpO2は酸素無しで98%であった。来院時の身体所見では、口腔内乾燥所見と、四肢のツルゴールの低下の所見あり。12誘導心電図では、V1-V4で著明なST上昇、II・III・aVFのST低下の所見を認めた。心エコー図検査では、心尖部で一部壁運動低下が認められるものの、全体的な収縮波保たれていた。胸部所見に乏しいことから、他の疾患が合併している可能性を考え原因検索を行ったところ、血液検査で尿素窒素 85 mg/dl、クレアチニン 3.12 mg/dl、、Na 155 mmol/Lと著明な脱水を示唆する所見と、随時血糖1362 mg/dlと著明な高血糖を認めた。尿中のケトン体は陰性であり、高血糖高浸透圧症候群が考えられ、生理食塩水の急速輸液と、インスリン投与で加療を開始した。心電図変化に対しては、冠動脈造影検査を施行したところ、冠動脈の全体的な狭窄所見が認められた。ニトロールの冠動脈投与を行ったところ、狭窄は速やかに解除され、心電図のST上昇所見も改善を認めた。以上より、高血糖高浸透圧症候群に冠攣縮性狭心症が合併したものと考え、集中治療室入室後、補液とインスリン投与による高血糖高浸透圧症候群の加療と、電解質補正と共に、シグマートの持続点滴行った。入院翌日には、血糖値は300mg/dl前後にまで改善し、心電図も著明な改善を認めた。血液検査では、max CK 1006 IU/l、CK-MB 34.8 IU/lであり、心筋障害は最小限であったと考えられた。高血糖高浸透圧症候群に合併する冠攣縮性狭心症は稀であり、非常に貴重な症例と考えられることから、文献的考察を加えて報告する。