[O39-1] 止血に難渋した大腿血腫の一例
【はじめに】本態性血小板血症は慢性骨髄増殖性疾患の1つで、多分化能造血前駆細胞に異常を来すクローン性疾患であり、血小板の量的、機能的、形態学的異常を示す。多くが無症候性だが、時に血栓・出血症状を伴う。【症例】既往に本態性血小板血症がありヒドロキシカルバミドを内服している83歳男性が転倒し左大腿内側を打撲。腫脹、疼痛、体動困難を認めたため前医入院となった。入院中に大腿血腫の増大を認め7日間で濃厚赤血球計18単位を輸血されたが出血のコントロール不良のため当院整形外科に転院となった。術前採血で血小板136万、PT-INR1.12、第13因子活性が49%と低値を認めたため第13因子を補充し、左大腿血腫、皮膚壊死に対してデブリードマンを施行した。しかし、術後出血が止まらず、ガーゼパッキングを施行したが、ショック状態になったため救急科にコンサルトとなった。集中治療室入室時の血液データでは血小板55.9万,PT-INR 1.81であった。集中治療室で血小板輸血を中心とした大量輸血療法(赤血球42単位、血小板60単位、新鮮凍結血漿40単位、クリオプレシピテート4単位)、全身管理を継続し、転科7病日に血小板40.4万,PT-INR 1.11で再度手術を施行して止血を得られた。そして、同日集中治療室退室となった。【結論】本態性血小板血症において出血性合併症の原因は,血小板数が著増した状態で機能異常を来すことが関与する。今回の症例においても血小板凝集能検査を施行し軽度の低下を認めていた。また、後日測った第13因子活性は正常値であったことから術前採血で認めた第13因子活性の低値は出血によって一時的に消費されて低下したものと考えられたため、今回の止血に難渋した原因としては本態性血小板血症による影響を考えた。本態性血小板血症症例において止血が制御不良の場合には、血小板数が増加していても、その機能が著しく低下している可能性があるため、血小板輸血を積極的に考えることが肝要である。