[O39-2] 外傷性くも膜下出血を合併した巨赤芽球性貧血の1例
【背景】巨赤芽球性貧血は造血細胞でのDNA合成障害の結果,骨髄に巨赤芽球が出現する貧血で大球性高色素性貧血となる.血液像は汎血球減少となることが多く,汎血球減少に伴う様々な症状を呈する.意識障害を主訴に救急搬送された,外傷性くも膜下出血(SAH)を合併した巨赤芽球性貧血の1例を経験した.【臨床経過】患者:40歳台,男性. 既往歴:未破裂脳動脈瘤,高血圧,適応障害.服薬歴:抗うつ薬,抗癲癇薬.偏食があった.当院搬送半月程前より食欲不振と全身倦怠感があった.5日前より,ふらつきがあり転倒を繰り返すようになった.当日朝ベッドから起き上がれないため救急要請し当院に搬送となった.来院時所見:JCS:20, BT:36.8℃, HR:63/min, BP:78/37mmHg, SpO2:100%.頭痛ははっきりせず,嘔吐はなかった.瞳孔不同や明らかな麻痺は認めなかった.顔面蒼白で眼瞼結膜蒼白,末梢冷感を認めた.右肩部に皮下出血を認めた.血液検査:WBC:1570/μl, Hb:4.3g/dl, Plt:1.4万/μl, PT活性:72.7%, PT-INR:1.12, Na:123mmol/lと汎血球減少と低ナトリウム血症,血液凝固系は軽度の低下を認めた.頭部CT検査で右前頭部から側頭,後頭部にSAHを認めた.画像所見から数日経過したものと考えられICUに経過観察入院となった.内視鏡検査では胃粘膜に出血源と考えられる様な潰瘍性病変なかった.濃厚赤血球:8U, 新鮮凍結血漿:8U, 血小板:20Uの輸血を行った.輸血後,WBC:1600/μl, Hb:7.7g/dl, Plt:5.2万/μlとなった.翌日,血液内科専門医のいる病院に転院となった.転院先からの要望で当院の保存血中のビタミンの検査を追加した.ビタミンB12:94pg/ml,葉酸:3.3ng/mlと低値を示した.また,骨髄検査で巨赤芽球様細胞の出現と形態および成熟異常が指摘された.巨赤芽球性貧血の診断でシアノコバラミン:1000μg,フォリアミン:0.5mg ×3が投与された.徐々に汎血球減少は改善し,第26病日にはWBC:2900/μl, Hb:9.1g/dl, Plt:34.2万/μlとなり,退院した.【結論】外傷性SAHの原因として,貧血による脱力で転倒を頻回に繰り返すことと,血小板減少による出血傾向が主な原因と考えられる.適応障害などの精神状態による偏食と,薬物による食欲不振が,ビタミン欠乏による汎血球減少の原因となったと推察する.頭蓋内出血は重篤な経過をたどる可能性がある.汎血球減少を認めた場合,ビタミン欠乏も考慮し検査治療が必要である.