第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

一般演題(口演)

血液・凝固 症例

[O39] 一般演題・口演39
血液・凝固 症例01

Fri. Mar 1, 2019 3:50 PM - 4:30 PM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:宮崎 大(前橋赤十字病院高度救命救急センター 集中治療科・救急科)

[O39-4] ワルファリン内服中の脳出血にビタミンK、プロトロンビン複合体濃縮製剤が著効した1例

大野 博司 (洛和会音羽病院ICU/CCU)

 ビタミンK拮抗薬(以下VKA)ワルファリン内服中の脳出血は0.3~0.6%/年の頻度であり、30~90日死亡率は40~65%と機能的および生命予後が悪い。とくに発症24~48時間の血腫拡大が機能的・生命予後に関係している。 経口抗凝固薬を内服していない脳出血の血腫拡大は発症3~6時間で30~40%であるのに対して、VKA内服中では36~54%と効率にみられる。またVKA内服中の脳出血では遅発性の血腫拡大の頻度が高いことも知られている。そのため、VKA内服中の脳出血では診断し次第迅速にVKA拮抗を行う必要がある。 従来国内ではVKA拮抗薬としてビタミンK、新鮮凍結血漿(以下FFP)しか使用できなかったが、2017年よりプロトロンビン複合体濃縮製剤(以下PCC)が保険適応となり使用可能となった。世界的にもVKA内服中の脳出血ではビタミンKとPCCによる拮抗が推奨されており、FFPおよび遺伝子組換え型第7因子製剤は推奨されていない。PCCはFFPと比較して、迅速にINRが正常化し、血腫拡大の抑制効果が示されている。 今回、ビタミンKおよびPCCの迅速な投与により血腫除去・外減圧など脳外科的処置を回避でき、VKA内服中の脳出血1例を経験した。PCCとFFPの比較とともに、VKAおよび経口凝固薬内服中の脳出血へのアプローチについて文献的考察を含めて報告する。 症例は洞不全症候群、発作性心房細動、僧帽弁置換術(機械弁)後の66歳男性。VKA内服中で意識障害、脱力でER受診した。バイタルサインBP131/76, HR63整, RR15, SpO298%RA, BT36.6。頭頸部、胸部、腹部、四肢・皮膚:とくに異常なし。神経:GCS E4V4M6、従命追視可能、右同名半盲、右顔面麻痺、右上下肢脱力MMT3/5、右半身感覚障害、右半側空間無視があった。頭部CTで左視床出血、脳室穿破の診断となり、ビタミンK静注、PCC静注を迅速に行った。ER受診時、2時間後頭部CTフォローし血腫拡大なし。入院後も頭蓋内圧亢進に対する治療と血圧コントロールを行った。2、5、8病日の頭部CTフォローも血腫増大は認められなかった。7病日よりワルファリン再開したが頭部CT上脳室拡大傾向であるが血腫は吸収され再出血なかった。片麻痺あるが35病日リハビリテーション病院転院となり最終的には自宅退院となった。 PCC投与で迅速にINR正常化し血腫拡大が起こらず、FFP大量投与でみられる体液量過剰による心不全増悪の合併症は起こらなかった。