第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

血液・凝固 症例

[O40] 一般演題・口演40
血液・凝固 症例02

2019年3月1日(金) 16:30 〜 17:10 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:阪本 雄一郎(国立大学法人佐賀大学医学部救急医学講座)

[O40-2] 集中治療管理を要した治療抵抗性TAFRO症候群の1例

佐藤 翔太, 石原 徹, 桑野 公輔, 真鍋 早季, 小松 昌道, 沖 将行, 小澤 秀樹, 高木 敦司 (東海大学医学部付属病院 総合内科)

【緒言】TAFRO症候群は,発症が亜急性かつ病状が進行性に悪化して重篤化することが多く,迅速かつ的確な診断と治療が必要とされる.【症例】68歳,男性.【主訴】呼吸困難.【既往歴】高血圧,22歳で左腎摘(詳細不明).【現病歴】当院入院約2カ月前から全身倦怠感と食欲低下,その後に心窩部痛と眩暈が出現した.約1カ月前に,腎機能障害と血小板低下が認められ,前病院に緊急入院した.血栓性微小血管障害症など疑い精査するも原因不明で,急激な胸水と腹水の貯留,進行性の腎機能障害と血小板低下,不明熱や炎症反応陽性が持続した.呼吸不全の悪化と血圧低下も認められ,精査加療目的で当院へ緊急搬送となった.【来院時現症】意識 GCS E4V5M6 (15), 血圧 60/30 mmHg, 脈拍 110 /min, 呼吸数 40 /min, 体温 37.0 ℃, SpO2 98 % (3L nasal).眼瞼結膜は軽度蒼白,右肺野の呼吸音減弱,腹部は膨隆しているが軟で圧痛なく,四肢の圧痕性浮腫を認めた.【検査所見】血液検査は,WBC 13.5 ×103/μL, Hb 7.5 g/dL, PLT 0.1 ×104/μL, Cr 5.28 mg/dL, eGFR 9 mL/min/1.73m2, CRP 3.27 mg/dL.CT検査は,右側の大量胸水と大量腹水貯留,軽度脾腫大と軽度リンパ節腫大を認めた.【診断】亜急性の経過で,大量の胸腹水貯留など体液貯留,著明な血小板減少症,原因不明の発熱や炎症反応陽性,軽度脾腫やリンパ節腫大,進行性の腎障害を認めたため,TAFRO症候群(grade4)が疑われた.【経過】呼吸困難を伴う呼吸不全があり気管挿管と人工呼吸器装着,輸液負荷に抵抗性の血圧低下に対し昇圧剤持続投与開始し,ICUに入室した(APACHE 2 SCORE 26点, SOFA SCORE 16点).人工呼吸器管理は肺保護換気を,昇圧剤はノルアドレナリン(最大0.75γ)とバソプレシン(40単位/日)持続を,腎不全や体液過剰は持続的血液濾過透析を,血小板低下や出血傾向は血小板輸血を施行した.また,敗血症性ショックも否定できず,抗生物質のセフェピム,バンコマイシン,ミカファンギンを投与した.TAFRO症候群には,ステロイドパルス療法を2クール施行するも効果なく,トシリズマブ,シクロスポリンによる治療を導入した.体液貯留や呼吸不全の回復を確認して入院25日目に人工呼吸器離脱して抜管した.【考察,結語】TAFRO症候群は,治療を含めて未だ不明確な点が多い.本症例は,呼吸不全および血管拡張性ショックを呈して,集中治療管理を要した.本疾患の啓蒙と症例集積による検証が必要とされる.