[O40-3] ECMO管理中の未分化ヘパリン投与後に回路内血栓を契機にHITを診断した一例
【背景】ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)の約50%が血栓塞栓症を合併し、合併した場合の死亡率(5%程度)は非合併例よりも高率である。今回、Extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)管理中の回路内血栓とヘパリン投与後の血小板減少から早期にHITを診断し、塞栓症の合併なく良好な経過を辿った一例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は36歳男性。呼吸困難を主訴に当センターへ搬入となった。その際、尿中肺炎球菌抗原陽性、また血液培養で肺炎球菌が検出されたことより重症肺炎球菌性肺炎と診断し、人工呼吸管理を開始した。入院5日目にARDSを発症し、P/F ratio≦100の低酸素状態が持続したため、入院8日目にv-vECMOの導入と気管切開術を施行した。ECMO導入時より抗凝固療法として未分画ヘパリン400U/時の投与を開始した。ECMO導入後7日目にECMO回路内血栓に対して回路交換を行った。またECMO導入日の血小板数は258,000/μLであったが、ECMO導入後5日目に116,000/μLまで低下し、さらに6日目には49,000/μLと、1日の低下率は50%以上と急激な低下を認めた。このため、HITを疑い4T’s scoreを算出したところスコア7点であり、HIT抗体が陽性で、HIT抗体価は0.810(カットオフ値:0.400)であったことからHITと診断し、未分画ヘパリンをアルガトロバンへ変更した。ECMO導入後9日目に再度、回路内血栓を認めたが、P/F ratioは200まで改善していたため、回路交換は行わずにECMOを離脱し、入院22日目には人工呼吸器から離脱した。ECMO離脱翌日には血小板数は79,000/μL、離脱3日後には256,000/μLまで改善した。患者に明らかな血栓症の症状は認めず、入院33日目にリハビリ目的に転院となり、転院後10日目に自宅退院し、社会復帰した。【結論】ECMO管理中にヘパリン類を抗凝固剤として使用している際、回路内血栓と血小板減少を認めた場合はHITを鑑別に挙げ、4T’s scoreによるスコアリングとHIT抗体検査を行い、ヘパリン中止とアルガトロバンへの変更を可及的速やかに実施しなければならない。