[O46-4] 窒素酸化物吸入により急性呼吸促迫症候群(ARDS)に至った1例
【背景】窒素酸化物は工場、燃焼施設等での排出される大気汚染物質の1つであるが、亜硝酸ナトリウムはエアバッグのインフレーターとして工場で扱われている。窒素酸化物は誤吸入すると肺の粘膜に吸着されることで重症呼吸不全に至ることが知られている。今回、窒素酸化物の誤吸入によりARDSに至った症例を経験したので報告する。
【症例】基礎疾患のない20代男性。亜硝酸ナトリウムを扱う仕事中に操作を誤りガスが発生、誤吸入し10時間後に呼吸困難が出現した。搬送時、重症呼吸不全の状態であり救急外来にて挿管、胸部X線で両側浸潤影を認めICUで全身管理を行った。入室時のPaO2/FiO2比(P/F比)は50と著しい低酸素血症を認めていたため、低1回換気、プラトー圧制御の設定で人工呼吸管理を行った。窒素酸化物による呼吸不全に対してメチルプレドニゾロン250mg/dayの投与を開始した。入院2日目に気管支肺胞洗浄(BAL)を行なったが、好酸球の上昇は認めず、急性好酸球性肺炎は否定的と判断した。その後も酸素化の改善を認めず、同日に筋弛緩薬の持続投与および腹臥位管理を開始したところ、以降は徐々にP/F比が改善し、入院5日目に抜管に至った。当初は体外式膜型人工肺(ECMO)の導入も考慮したが、予後良好な報告が多いことに加え、Murray scoreは最大3点のため、呼吸管理を優先した。その後も酸素化の悪化を認めず、入院8日目に自宅退院とし、1ヶ月後の外来受診時にも異常は認めなかった。
【結論】窒素酸化物中毒により重症呼吸不全に至った症例報告は調べた限り10数例程しかなかった。窒素酸化物は上気道の粘膜にほとんど吸収されず、気管支以遠の粘膜に吸収され6-48時間で肺障害をきたすとされる。本例において原因物質の測定はできていないが、病歴及び重症呼吸不全が10時間の経過で出現していることに加え、画像所見・BAL所見等から他疾患の可能性は低いと考え、窒素酸化物によるARDSと診断した。特異的な治療薬はないが、多くの症例報告で比較的高容量のステロイドが投与されており、予後良好な経過をたどっている。本例もステロイド投与を開始し集中管理を行うことで、重症ARDSの状態から比較的速やかに改善しており、これまでの報告と同様に良好な経過をたどった。窒素酸化物によるARDSに対しては、集中的な呼吸管理やステロイド投与が重要な可能性が高い。また予後が比較的良い事から、ECMO導入は不要かもしれない。
【症例】基礎疾患のない20代男性。亜硝酸ナトリウムを扱う仕事中に操作を誤りガスが発生、誤吸入し10時間後に呼吸困難が出現した。搬送時、重症呼吸不全の状態であり救急外来にて挿管、胸部X線で両側浸潤影を認めICUで全身管理を行った。入室時のPaO2/FiO2比(P/F比)は50と著しい低酸素血症を認めていたため、低1回換気、プラトー圧制御の設定で人工呼吸管理を行った。窒素酸化物による呼吸不全に対してメチルプレドニゾロン250mg/dayの投与を開始した。入院2日目に気管支肺胞洗浄(BAL)を行なったが、好酸球の上昇は認めず、急性好酸球性肺炎は否定的と判断した。その後も酸素化の改善を認めず、同日に筋弛緩薬の持続投与および腹臥位管理を開始したところ、以降は徐々にP/F比が改善し、入院5日目に抜管に至った。当初は体外式膜型人工肺(ECMO)の導入も考慮したが、予後良好な報告が多いことに加え、Murray scoreは最大3点のため、呼吸管理を優先した。その後も酸素化の悪化を認めず、入院8日目に自宅退院とし、1ヶ月後の外来受診時にも異常は認めなかった。
【結論】窒素酸化物中毒により重症呼吸不全に至った症例報告は調べた限り10数例程しかなかった。窒素酸化物は上気道の粘膜にほとんど吸収されず、気管支以遠の粘膜に吸収され6-48時間で肺障害をきたすとされる。本例において原因物質の測定はできていないが、病歴及び重症呼吸不全が10時間の経過で出現していることに加え、画像所見・BAL所見等から他疾患の可能性は低いと考え、窒素酸化物によるARDSと診断した。特異的な治療薬はないが、多くの症例報告で比較的高容量のステロイドが投与されており、予後良好な経過をたどっている。本例もステロイド投与を開始し集中管理を行うことで、重症ARDSの状態から比較的速やかに改善しており、これまでの報告と同様に良好な経過をたどった。窒素酸化物によるARDSに対しては、集中的な呼吸管理やステロイド投与が重要な可能性が高い。また予後が比較的良い事から、ECMO導入は不要かもしれない。