第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

中毒

[O46] 一般演題・口演46
中毒04

2019年3月1日(金) 11:20 〜 12:10 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:一二三 亨(財団法人聖路加国際病院救急部)

[O46-6] 急性薬物中毒患者の挿管症例の検討

平澤 暢史, 神山 治郎, 人見 秀, 早川 桂, 八坂 剛一, 五木田 昌士, 勅使河原 勝伸, 田口 茂正, 清田 和也 (さいたま赤十字病院 高度救命救急センター 救急科)

【背景】薬物中毒で気管挿管を要した患者の背景因子を調べ、特に抜管失敗例について詳しく検討した。
【目的】中毒の原因となる薬物の種類が、抜管失敗のリスク因子になるのではないか。
【方法】2015年1月から2018年8月の期間に、急性薬物中毒でさいたま赤十字病院に救急搬送され入院となった717件の中で、挿管した症例および抜管失敗した症例を後ろ向きに検討した。
【結果】外傷合併例や来院時CPAの症例を除くと、58例(8.1%)が気管挿管を要し、その理由の94%が高度意識障害による気道異常だった。死亡退院したもの、重症のため気管切開を行ったものは除外すると、再挿管となった抜管失敗例は5件(8.6%)だった。この5例を検討すると、患者の主な内服薬はペントバルビタール1例、リチウム1例、有機リン1例、不詳2例(トライエージRで1例はBAR、BZO陽性、1例はBZOのみ陽性)だった。全例で抜管前に人工呼吸器設定をCPAP+PSとして Spontaneous Breathing Trialを行い予定抜管したが、有機リンの1例を除き、抜管後まもなく再挿管となった。再挿管の理由として全例に上気道等の浮腫を認め、その他に喉頭痙攣1例、誤嚥性肺炎1例、喉頭肉芽種1例が挙がった。平均年齢46.0歳(39-82歳)、女性が4例(80%)、挿管日数は2-7(平均4.0)日、BMI>30kg/m2が2例(40%)、平均BMI28.9kg/m2だった。挿管チューブは体格に対し適切な太さが選ばれていた。
集中治療室の10-20%程度の患者が抜管失敗するといわれており、一般的な抜管失敗のリスクとして、年齢、挿管期間、重症度、気道分泌物の量、抜管前の輸液量等、様々な因子がある。バルビツレート系、リチウム、有機リンなど、意識障害が遷延しやすい薬物中毒では、挿管期間の延長や入院期間延長に伴う輸液過多によって気道浮腫を起こしやすく、抜管失敗のリスクになりえたと考えた。挿管日数が24時間以上だった症例28例をみても、抜管失敗群5例の平均挿管日数は4.6日であり、抜管成功群23例の平均挿管日数3.8日より長かった。特定の薬剤が抜管困難を引き起こすと結論づけることはできなかった。しかし、ベンゾジアゼピン系や新規抗精神病薬の過量内服で救急搬送される症例は、ほとんどが翌日までに抜管できており、再挿管例はなかった。
【結論】意識障害が遷延しうる薬剤の過量内服は抜管失敗のリスクとなりうる。安全性が比較的高いとされる薬剤の過量内服では、挿管期間が短く再挿管のリスクも低い。