第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

内分泌・代謝 研究

[O5] 一般演題・口演5
内分泌・代謝 研究

Fri. Mar 1, 2019 4:55 PM - 5:55 PM 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:嶋岡 英輝(兵庫県立尼崎医療センター 集中治療センター)

[O5-3] SGLT2阻害薬を内服中の周術期管理についての検討と考察

遠藤 武尊1,2, 大竹 晶子1, 椎野 明日実1, 山下 美沙子1,2, 樋渡 智香子1, 清水 智子1, 原山 信也1, 二瓶 俊一1, 相原 啓二1, 蒲地 正幸1 (1.産業医科大学病院 集中治療部, 2.産業医科大学 麻酔科学講座)

【はじめに】SGLT2阻害薬は強力な血糖降下作用をもち、また近年の大規模試験で心腎保護効果が示されたことから、急速に使用が拡大している。周術期や重症管理においても内服患者は稀でなくなった。一方で救急領域では、合併症としての高度脱水症や脳梗塞も散見され、中でも高血糖を伴わないEuglycemic Diabetic Ketoacidosis (euDKA)は見逃しやすいが重篤な合併症として報告されている。今回、SGLT2阻害薬が周術期管理に及ぼす影響を検討した。【方法】SGLT2阻害薬を内服中の手術患者25例について検討した。全例、麻酔科医の指示で当日の内服は中止されていた。検討項目として手術開始時、術中、手術終了時の血糖、尿糖、尿ケトンを測定した。また術中の循環動態や尿量についても検討を加えた。【結果】術中の血糖値は全例が正常範囲であった。20/25例で手術開始時から終了まで+4以上の高度尿糖が継続していた。また、8/25例で尿ケトン陽性であり、うち6例は尿ケトン+2以上で少なくともケトーシスの状態であった。高度尿糖であった中の数例では不適切な利尿を来したと思われる症例が見られた。5/25例は尿糖が陰性から+3以下と比較的軽度であった。うち4例は下部消化管手術などで、麻酔科医指示の以前に35から48時間の内服中止時間があり、高度尿糖の20例に比べ長時間の内服中止であった。【考察】高度尿糖は循環動態を反映しない浸透圧利尿となりうる。実際、hypovolemiaにも関わらず多尿となり術中術後管理に難渋する症例も経験された。また、ケトーシス症例はeuDKAの可能性も示唆された。SGLT2阻害薬による糖利用障害に加え、手術患者や重症患者の侵襲や絶食管理はDKA発症のリスクをより高めると考えられる。今回の検討より、24時間の内服中止では糖代謝への作用遷延が強いことが明らかになり、他の経口血糖降下薬とは異なる管理の必要性も考慮された。【結語】SGLT2阻害薬を内服中の患者は、高度尿糖による浸透圧利尿やeuDKA状態となる可能性がある。周術期や重症管理においては同薬の影響を認識するとともに、内服中止時期など適切な管理を検討していく必要がある。