第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

内分泌・代謝 研究

[O5] 一般演題・口演5
内分泌・代謝 研究

Fri. Mar 1, 2019 4:55 PM - 5:55 PM 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:嶋岡 英輝(兵庫県立尼崎医療センター 集中治療センター)

[O5-2] 心臓血管外科術後症例における血糖コントロールに対しての人工膵臓の使用

堀口 佑, 中村 さやか, 古出 萌, 小山 有紀子, 坂口 了太, 吉田 健史, 岩崎 光生, 酒井 佳奈紀, 内山 昭則, 藤野 裕士 (大阪大学 医学部 麻酔集中治療医学教室)

【背景】近年、周術期の血糖コントロールにclosed loop systemによる人工膵臓を用いることが着目されている。人工膵臓によって血糖値をリアルタイムに連続測定し、自動アルゴリズムでブドウ糖・インスリン注入を行うことで、低血糖を回避しながら日内変動を抑えた安定した血糖管理に寄与することが期待される。【目的】人工膵臓を用いることで、従来の血糖コントロールと比較して周術期の血糖変動や低血糖を回避できる可能性がある。また、従来の動脈血液ガス分析装置による血糖測定と人工膵臓による血糖測定の誤差を調査する。【方法】当院ICUに2018年4月から6月に予定入室した60歳以上の心臓血管外科術後症例に対して、人工膵臓を用いた9例と従来の血糖コントロールを行った37例を対象として後方視的に症例対象研究を行った。人工膵臓群は、人工膵臓装置の血糖目標値を110-150mg/dlと設定した。従来の血糖コントロール群は、血糖値が110-180mg/dlとなるように医師の判断でインスリンの投与を行った。入室後24時間の平均血糖値、血糖値標準偏差、最大血糖値と最小血糖値の差、低血糖イベント(90mg/dl以下)回数を主要評価アウトカムと設定した。また、人工膵臓使用群において動脈血液ガス分析装置で測定された血糖値と人工膵臓で測定された血糖値を比較した。2群間の比較にはt検定もしくはχ2検定を行い、有意水準は5%とした。【結果】人工膵臓使用群vs非使用群において、平均血糖値159±25.5 vs 153±20.7mg/dl(p=0.46)、血糖値標準偏差20.1±14.7 vs 20.7±9.97mg/dl(p=0.89)、最大血糖値-最小血糖値 53.2±33.4 vs 57.7±29.2mg/dl(p=0.70)(それぞれ平均値±標準偏差)、低血糖回数0 vs 2回(p=0.48)、であり、いずれも統計学的有意差を認めなかった。動脈血液ガス分析装置で測定された血糖値と人工膵臓で測定された血糖値の差は9.07±10.3mg/dlで、動脈血液ガス分析装置による値の方が大きい傾向が見られた。【結論】人工膵臓を用いることで、血糖値の日内変動をより厳密に抑えることはできなかったが、低血糖イベントを発生させることなく従来の血糖コントロールと同等の治療を行うことができた。血糖コントロールの難しい症例において、人工膵臓を用いることで低血糖を避けながら良好な血糖コントロールを行うことができる可能性がある。