[O53-1] 急激な経過を辿った新生児心筋炎の2例
【背景】心筋炎は新生児から成人まで幅広く発症する急性疾患である。中でも新生児心筋炎は全体の2/3が劇症型で、致死率は50%以上と極めて高い。補助循環を要したり、そこに至る前に亡くなる症例が多い中、早期治療介入をすることで救命出来た新生児心筋炎を2例経験したので報告する。【臨床経過】症例1:日齢10の男児。在胎38週4日、出生体重2858g、周産期に特記事項なし。日齢9から哺乳不良があり、急激に循環不全が悪化したため当院CCUへ紹介搬送された。入室後の検査では心血管構造異常はないもののEF=20%、また逸脱酵素の軽度上昇・BNP=10500・トロポニン陽性。左室後壁から側壁にかけての局所壁運動低下を認めたため、心臓カテーテル検査を行ったが冠動脈疾患は否定的であった。ECMOスタンバイしていたが、人工呼吸器管理・強心剤投与などで速やかに心機能は改善した。後日、ウイルス分離でコクサッキーB2が検出され、心臓MRI検査で左室全周に及ぶ炎症所見を認めたことから、新生児心筋炎と診断した。入院45日目に後遺症なく退院したが、退院時には壁運動は正常化していた。症例2:日齢19の女児。在胎41週0日、出生体重3096g、周産期に特記事項なし。日齢13からの体重増加不良・哺乳不良があり、当院CCUへ紹介された。EF=30%・逸脱酵素の軽度上昇・BNP=15000・トロポニン陽性。小さい心室中隔欠損以外には構造異常なし。入室後急速に循環不全が進行、人工呼吸管理・強心剤投与を開始した。ECMOもスタンバイしていたが、循環動態は速やかに改善、入院6日目に抜管。後日、エンテロウイルス71の抗体価上昇・心臓MRI検査での炎症所見から新生児心筋炎と診断した。入院21日目に後遺症なく退院した。【結語】いずれの症例も心筋炎の可能性も考えて早期から循環&全身管理を開始し、補助循環をスタンバイしていた。幸い補助循環を必要とするような循環動態の悪化や致死的不整脈はなかったが、新生児の心原性ショックでは常に心筋炎の可能性を念頭に置き、必要時には直ちに補助循環が導入できる体制で管理することが重要である。