第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

新生児・小児 症例

[O53] 一般演題・口演53
新生児・小児 症例01

Fri. Mar 1, 2019 9:40 AM - 10:30 AM 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:植田 育也(埼玉県立小児医療センター)

[O53-2] 間欠性大動脈弁閉鎖不全による心筋虚血発作からECMO管理を要した1例

其田 健司1, 小泉 沢1, 大軒 健彦2, 小澤 晃2, 田中 高志2, 正木 直樹3, 松尾 諭志3, 崔 禎浩2, 川名 信1 (1.宮城県立こども病院 集中治療科, 2.宮城県立こども病院 循環器科, 3.宮城県立こども病院 心臓血管外科)

【背景】間欠性大動脈弁閉鎖不全(AR)は,新生児期に致死的な呼吸循環不全をきたす稀な疾患で,非発作時には重篤な所見を呈さず,診断が難しい。【臨床経過】日齢24の女児。哺乳後の啼泣から急激に顔色不良となり前医受診。呼吸停止,ショックの状態で,気管挿管,人工呼吸管理,カテコラミン開始。心エコーではsevere ARの所見で,胸部エックス線写真では両肺野に含気を認めなかった。酸素化の維持に高い気道内圧での呼吸管理を要し,第2病日に縦隔気腫を認めたため,当院PICUに転院した。[身体所見] 心拍数152回/分,血圧62/36mmHg,SpO2 74%。呼吸音は乏しく,心尖部中心に連続性雑音を聴取した。[検査所見] 血液検査ではCK-MB 210 U/L,BNP 254 pg/mLと上昇,動脈血液ガス分析ではpH 6.78,pCO2 139 mmHg,HCO3- 20.8 mmol/L,BE -15.2 mmol/Lと重度のアシデミア,心エコーでは軽度の心収縮低下,trivial ARを認めた。[経過] HFOVとNOの併用下で,Oxygenation Index=37,PaCO2 117 mmHgと重度の酸素化換気障害を認めたため,VV-ECMOを導入。呼吸,心機能はいずれも徐々に改善し,第7病日ECMO離脱。抜管後一般病棟に転棟。その後1-2週間おきに,急激に進行する呼吸循環障害を繰り返し,人工呼吸管理,カテコラミンによる循環補助を要した。心電図で,鎮静後に軽快するST変化を認めたため,発作性の心筋虚血が病態に関与していると推察されたが、全身麻酔下の心臓カテーテル検査では異常を認めなかった。3度目の心筋虚血発作時に,心エコーでsevere AR,大動脈弁左冠尖の可動不良を認めたため,緊急心臓カテーテル検査を施行した。大動脈造影時点では,ARは消失しており,冠動脈の異常所見も認めなかったが,覚醒,啼泣させたところ,心電図でST 変化,大動脈造影で3度のAR,左冠尖の描出不良を認めた。心筋虚血発作の原因は,発作性の左冠尖の開放位固定による重度のAR,冠動脈潅流の障害と考えられた。翌日,大動脈弁形成術施行。左冠尖は有意に小さく,両交連を縫縮し終了。術後はARと心筋虚血発作の再燃なく,残存した心機能低下に対し内服加療を継続している。【結論】大動脈弁左冠尖の低形成を主因とする間欠性重症ARは,早期乳児の心筋虚血,呼吸循環不全の誘因となり,外科的治療が有効である。診断には,再現性のある心筋虚血,呼吸循環不全といった経過と,重症度の変動するAR,症状増悪初期の心エコー検査が有用な可能性がある。