第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

新生児・小児 症例

[O53] 一般演題・口演53
新生児・小児 症例01

2019年3月1日(金) 09:40 〜 10:30 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:植田 育也(埼玉県立小児医療センター)

[O53-5] 肺出血を繰り返した慢性DICに対しガベキサートメシル酸塩が著効した新生児例

森 剛史, 加久 翔太朗, 木谷 好希, 置塩 英美, 瀧 正志 (聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 小児科)

【背景】新生児仮死は新生児播種性血管内凝固症候群(DIC)の2大原因の1つであるが、慢性DICを呈することは少ない。今回我々は壊死性腸炎、急性腎不全、繰り返す肺出血を合併し、慢性DICの経過を辿った新生児仮死の症例に対して、メシル酸ガベキサート(FOY)が著効した症例を経験したので報告する。【臨床経過】 在胎40週2日、3680gで他院にて出生した男児。Apgar score1分2点、5分評価不能、10分4点であった。生後1時間で前医に搬送となり血液ガス上、pH6.652、BE-28.9で、痙攣症状も認めたため、生後4時間で脳低体温療法を開始した。しかし広範な褥瘡を認めたため、生後43時間で低体温療法は中止となった。日齢5の胸腹部レントゲンでfree airを認め、消化管穿孔の疑いで当院転院となった。転院後、循環不全に対してカテコラミン投与、消化管穿孔に対してドレーン留置を行った。DICに対しては、前医より開始されていたトロンボモデュリンアルファを数日継続し、さらにAT低下に対しては適宜補充療法を行った。日齢17に1回目の肺出血を起こし、サーファクタント肺胞洗浄にて対応した。呼吸状態が落ち着いた日齢25に抜管したが、翌日に2回目の肺出血を起こし再挿管、再度サーファクタント肺胞洗浄を要した。全身状態が安定した日齢31に消化管穿孔に対する手術を行った。穿孔部位は小腸で、計5ヶ所の大小の穿孔を認め壊死性腸炎と診断した。日齢39(術後8日目)に3度目の肺出血を認め、サーファクタント肺胞洗浄を行った。血小板減少・D-dimmer高値が持続していたため、出血の原因を線溶亢進型の慢性DICと判断し、腎不全、高K血症の合併が認められた為、FOYを選択し治療を行った。その後肺出血は再燃なく、順調に血小板数、D-dimerは正常化し、DICを離脱した。クレアチニン、シスタチンCは高値であり、貧血、重炭酸の喪失を認め慢性腎臓病にいたったが、排尿はコンスタントに得られており、透析は導入せず経過をみている。【結論】繰り返す肺出血の原因を、線溶亢進型の慢性DICと診断し、FOYの治療により慢性DICを離脱できた症例を経験した。DICの病態を考慮した治療法の選択は重要である。