[O54-5] 口蓋形成術後における気管チューブのカフの有無による有害事象の検討
【背景】近年、高容量低圧カフの小児用気管チューブが普及し、1歳児でもカフあり気管チューブの使用頻度が増加している。口蓋形成術は1歳頃に行われ、術後に気道合併症を懸念し人工呼吸管理を選択することがあり、口腔内の出血や分泌物による誤嚥の可能性を懸念し、カフありチューブを選択するようになってきた。しかし、気管チューブのカフの有無が気道狭窄や誤嚥の予防に関与しているか、十分に検討されていない。今回、口蓋形成術後におけるカフの有無による有害事象の差について検討したので報告する。【目的】口蓋形成術後の人工呼吸管理において、カフあり気管チューブを使用することで無気肺などの呼吸器合併症が減少するのではないかと考えた。【方法】2014年1月から2018年7月の間に、内径3.5mmの気管チューブを用いて口蓋形成術を行い、術後集中治療室にて人工呼吸管理を行った症例を対象とした。当院の倫理委員会の承認と患者家族から書面による同意を得た。患者はカフ有(Microcuff:Halyard Healthcare Inc,USA)群とカフ無(Portex:Smiths Medical,USA)群の2群に分け、無気肺の発生、抜管時の気道狭窄症状(嗄声、吸気性喘鳴)、挿管直後と抜管直前の気道リーク圧について、後方視的に検討した。統計解析はEZRを使用し、Mann-whitney U検定とカイ2乗検定を用い、統計学的有意水準をP<0.05とした。【結果】検討対象となった症例は62例(中央値[四分値範囲]:月齢14.5[14.0-16.0])か月、身長75.0[73.6-77.3]cm、体重9.4[8.6-10.0]kg)で、カフ有群34例、カフ無群28例だった。2群間で患者背景に有意差はなかったが、手術時間と挿管時間はカフ有群で有意に長かった。周術期水分出納(P=0.677)と胸部X線写真での無気肺の発生頻度(P=0.566)に有意差はなかった。カフ有群で、抜管時の気道狭窄症状(P=0.014)と気道リーク圧(P<0.001)は有意に増加した。【結論】気管チューブのカフの有無に関わらず、無気肺は発生した。また、カフ有群の方が抜管時の気道狭窄症状が多く気道リーク圧が高くなっており、カフが気道粘膜の浮腫に関与している可能性が考えられた。ただし、重大な合併症は2群ともに認めなかった。今回の検討ではカフの有無による有害事象を検討したのみで、有益性の検討はしていない。口蓋形成術の周術期管理における適切な気管チューブの選択については、さらなる検討が必要である。