第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

中枢神経

[O58] 一般演題・口演58
中枢神経01

2019年3月1日(金) 15:40 〜 16:30 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:森本 裕二(北海道大学病院麻酔科)

[O58-5] 【優秀演題(口演)】持続する強い口渇はせん妄発症と関連する

佐藤 康次, 岡島 正樹, 野田 透, 谷口 巧 (金沢大学附属病院 集中治療部)

【背景】集中治療室(ICU)に入室している患者は,口渇を訴えることが多い。しかしながら十分に評価されているとは言い難く,その対応も未だ不十分であると言われている。せん妄は急性脳機能障害であり,痛みや不眠など患者が感じるストレスがその発症に影響すると言われているが,口渇との関連はこれまで指摘されていない。【目的】本研究の仮説は,強い口渇はせん妄の発症と関連するとし,口渇とせん妄との関連を調査する。【方法】研究デザインは後ろ向き観察研究である。2017年3月から2017年10月まで,当院ICUへ入室した患者で,ICU滞在中に口渇度を調査できた401人を対象とした。口渇度はNRSスケール(0から10まで,0:口渇なし,10:最も強い口渇)にて,1日2回の調査とした。また口渇スコア8以上を強い口渇と定義した。せん妄のスクリーニングはICDSCにて行い,スコア4以上をせん妄と定義した。口渇とせん妄との関連を調査するため,多変量Coxハザード解析を用いた。【結果】401人中,強い口渇を呈した患者は163名(40.6%)であった。全体でのせん妄の発症は47名(11.7%)であった。強い口渇を呈した患者はSOFAスコアが高く, 消化器疾患,人工呼吸管理,CRRT施行の割合が高かった。また強い口渇が24時間以上持続した患者は強い口渇を呈した中の40.5% (66名)であった。年齢,性別,Charlson comorbidity index, APACHE IIスコア,SOFAスコア,麻薬の使用の有無で調整したCoxハザード解析において,せん妄の発症は強い口渇を呈した患者との関連は認めなかったが(hazard ratio (HR): 1.51, 95% confidence interval (CI): 0.81-2.81, p = 0.195),口渇が持続した症例では有意に関連を認めた(HR: 2.86, 95% CI: 1.44-5.67, p = 0.003)。持続する口渇を予測する因子として消化器疾患(OR: 2.71, 95%CI: 1.32-5.58, p = 0.007), 麻薬使用(OR: 2.06, 95%CI: 1.08-3.92, p = 0.029), 尿素窒素(OR: 1.23, 95%CI: 1.01-1.50, p = 0.041 (per 10mg/dL)),血清ナトリウム (OR: 2.17, 95% CI: 1.02-4.61, p = 0.045 (per 10 mEq/L))が挙げられた。【結語】強い口渇を呈する患者はICUで頻繁に認められ,強い口渇が持続する症例ではせん妄の発症と関連が認められた。これらの結果よりICUで治療担当する者は口渇の程度に加え,その時間的経過を観察し,特にせん妄高リスク患者では迅速な口渇ケアの介入が望ましいと考えられる。