第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

リハビリテーション

[O66] 一般演題・口演66
リハビリテーション03

2019年3月1日(金) 11:05 〜 12:05 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:高瀬 凡平(防衛医科大学校 集中治療部)

[O66-5] 当院における,破傷風を罹患した超高齢患者の早期リハビリテーション介入の取り組み

千葉 修平1,2, 淺田 馨3, 大林 正和3, 滝内 麻未4, 池田 武史5 (1.社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院 救急リハセンター, 2.中東遠総合医療センター, 3.中東遠総合医療センター 救急科, 4.社会医療法人財団慈泉会 相澤病院 栄養科, 5.医療法人 沖縄徳洲会 中部徳洲会病院 集中治療部)

【はじめに】破傷風は,破傷風菌の産生する毒素によって起こる重篤な感染症である.主症状は嚥下障害,開口障害,全身の強直性痙攣,自律神経障害,呼吸障害を引き起こす.破傷風は本邦において年100症例と少なく,破傷風に対するリハビリテーション報告は少ない.今回,超高齢患者にリハビリテーションを早期から実施した取り組みについて紹介する.
【症例紹介】96歳男性
【既往歴】高血圧
【病前ADL】歩行は伝い歩きで自立,失禁はあるがトイレで排泄していた.妻と二人暮らしで訪問介護を利用していた.
【現病歴】自宅庭で釘を踏み,受傷一週間後嚥下障害,開口障害を主訴に当院受診した.破傷風の診断で破傷風トキソイド,ペニシリンGカリウム,硫酸マグネシウム,筋弛緩薬を使用し治療開始となる.
【入院後経過】感染源である左足底の刺傷は切開排膿し,ドレーン留置した.開口障害,呼吸不全の悪化に伴い,挿管管理となる.挿管後より,呼吸リハビリテーション,関節可動域訓練を開始した.筋弛緩薬は第3病日で終了し、経腸栄養を開始した.一週間後気管切開が施行された.筋緊張亢進が軽減した第28病日より離床を開始し,チルトテーブルを用いた立位保持練習,長下肢装具を利用した歩行練習へと進めた.姿勢変化による筋緊張の亢進は残存する状態であったが,日中はリクライニング車椅子へ移乗し離床時間を確保した.人工呼吸器管理開始一ヶ月後に人工呼吸器離脱し,第41病日にICU退室となった.ICU退室時基本動作の改善は見られなかった.回復期病棟でのリハビリテーションを継続し,退院時には身辺ADL・歩行器歩行見守りまで改善したが,高齢の妻と二人暮らしのため,施設への入所待ち中に慢性期病院へ転院となった.
【考察】本症例は入院早期より,自律神経障害によるリスク管理を行いながら,関節可動域訓練と呼吸リハビリテーションを中心に実施した.安静時の筋強直は比較的コントロールされていたが,刺激による筋緊張亢進が出現し,可能な範囲で関節可動域訓練やポジショニングを実施したが,尖足拘縮を呈してしまった.しかし,筋弛緩薬の早期終了,呼吸状態の悪化や無気肺・肺炎の罹患なく経過したこと,早期離床により廃用症候群の予防が実施できたことが,超高齢である本症例が,歩行見守りまで改善した背景として考えられる.
超高齢者の破傷風でも早期からのリハビリテーション介入することで良好な結果が得られる場合もあることが示唆された.