第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

リハビリテーション

[O67] 一般演題・口演67
リハビリテーション04

2019年3月1日(金) 14:00 〜 15:00 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:関野 元裕(長崎大学病院集中治療部)

[O67-5] 超音波画像診断装置によるICU入室患者の骨格筋特性評価 ーICU-AW・予後との関係ー

小池 朋孝1, 見井田 和正2, 神谷 健太郎3, 濱崎 伸明2, 黒岩 政之4, 新井 正康5 (1.北里大学病院 集中治療センター RST・RRT室, 2.北里大学病院 リハビリテーションセンター, 3.北里大学 医療衛生学部, 4.北里大学 医学部 麻酔科学教室, 5.北里大学医学部附属新世紀医療開発センター 集中治療医学)

【目的】
我々は前回大会で、ICU入室患者における骨格筋を超音波画像診断装置で評価し、隣り合う骨格筋の境界が描出不明瞭(境界不明瞭)となる症例が散在する事を示し、これが敗血症性ショック、その治療と関係する可能性を報告した。今回は境界不明瞭の定義化を行うことで客観性を高め、詳細な要因について調査した。境界不明瞭を呈した症例の予後の傾向を含め報告する。
【方法】
ICU入室患者63例(男:51、女:12、平均年齢69±13歳、平均ICU在室日数13±15日)を対象とした。超音波検査は大腿直筋および中間広筋の筋厚と境界不明瞭の有無を評価した。1.筋間中隔・筋膜の高輝度、2.骨格筋の筋膜隣接高輝度領域、3.骨格筋全域の高輝度、4.骨格筋のまだら様の高輝度を認めた場合に境界不明瞭と定義した。(1)境界不明瞭の有無に関連する因子を調査した。(2)境界不明瞭の有無、ICU入室中の最大筋厚、ICU入室中の筋厚の変化率、ICU入室日数、ICU退室時Functional status score for the intensive care unit(FSS-ICU)を独立変数、ICU入室後3ヶ月のmodified - Rankin Scale(3M-mRS) を従属変数として重回帰分析を行い関連する因子を検討した。(3)(2)と同様の独立変数においてICU退室時MRC scoreが48点以下か否かを従属変数としてロジスティック回帰分析にて関連因子を検討した。
【結果】
(1)境界不明瞭に相関がある因子は敗血症性ショック(r=0.31, P=0.004)、測定時DICの有無(r=0.276, p=0.012)であった。(2)単相関において、3M-mRSにはFSSICU(r=-0.710, p<0.001),ICU入室期間(r=0.443,p=0.001)、境界不明瞭の有無(r=0.452, p<0.001)が相関を示した。重回帰分析において、標準化係数βはFCC-ICU(β=-0.528, p<0.001)と境界不明瞭(β=0.23, p=0.025)が有意な項目であり、3M-mRSに強く影響した。(3)MRC score48点以下に起因するのは境界不明瞭(オッズ比4.495, P=0.004)であった。
【考察】
境界不明瞭は骨格筋の質的変化を示唆するがその因子はICU入室患者に特有の病態が起因していることから、ICUAWに影響し、生命予後、機能予後にも関係すると考えられた。境界不明瞭を認めた場合の対策や、あるいは予防できる要素を解明できればICUAW、PICSによる予後増悪を改善できると考えられた。